偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない

10. 星あかりルームで


 ブライダルフェアの後はホテル内のとある客室でディナーを楽しんだ。メニューはレストランのフルコースと同じらしく、広いダイニングテーブルの上に並べられた料理は、ルームサービスとは思えないほど豪華なものばかり。

 だからホテル内のどこへ行っても従業員の目があると思っていたのに、響一の宣言通り、二人は誰にも邪魔されずに食事の時間を楽しむことが出来た。

 ディナーが終了したと連絡するとスタッフが食器を片付けてくれたので、退出していく彼らにお礼を言い、あかりも帰宅の準備をしようとした。しかしコートを羽織ろうとしたあかりの腕は響一に掴まれ、そのままソファの上に身体を押し倒されて唇を重ねられた。

 口付けの合間に『急になにするんですか』と訊ねたら『あかりこそ、なんで急に帰ろうとするんだ』と憮然とした表情で言われてしまう。

 そこで響一と意見をすり合わせてようやく知った『今日はこの部屋に泊まりだぞ?』

 驚いた。
 驚きのあまり間抜けな声が出た。

 急な報告に文句のひとつも言いたくなる。事前に教えてくれたら宿泊準備もしてきたのに、何も聞かされていなかったあかりは完全に手ぶらでルビーグレイスに来てしまった。

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