偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない

 もしかしたらあかりに別の相手がいると誤解をしたせいで――あかりを失うかもしれないと思って焦ったせいで、何かに火が付いたのかもしれない。独占欲が増幅したのかもしれない。

 あかりもその火がいつか消えてしまうのではないかと不安を覚えるが、とりあえず今のところは消える気配がない。むしろ燃え盛る一方だ。

「これなんだろう?」

 響一を待つ間に豪華なスイートルームの中を色々と見て回っていたあかりは、リビングルームのチェストの上に分厚いファイルが置かれていることに気が付いた。ダークブラウンの合皮に金色の文字でIRIYA HOTELと箔押しされたそれは、ホテル内のサービスを記したガイドのようだった。

「わぁ……さすがイリヤホテル……ルームサービスまで豪華!」

 中を開くと、まず最初に飛び込んで来たのはルームサービスの一覧だった。

 先ほどの食事はクリスマスディナーを部屋で摂るという響一の特権によるものだが、メニュー表を見ると通常の食事もかなり豪華だった。

 パスタやオムライスやハンバーグといったワンプレートの洋食やオープンサンドやピザといった軽食はもちろんのこと、和食も洋食も中華も麺類も用意されている。メニューにはヴィーガンやハラールの対応も承ると書いてあるので流石イリヤホテルだなぁ、と密かに感心してしまう。

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