偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない
「へえぇ、ナイトバー三つもあるんだ……! プールもある! すごーい」
ページを捲っていくと施設案内が目に映る。エントランスから続くラウンジに始まり、レストランやカフェ&バーなどの飲食店、売店やブティック、スパや室内プールに、アミューズメントなど、ありとあらゆる娯楽を網羅している。シティホテルというよりもテーマパークのようだ。
あかりはふと、そのうちの一つを目にした瞬間ページを捲っていた手をぴたりと止めた。
「女性専用スパマッサージ」
目の前に飛び込んで来た文字をそのまま反復する。その言葉に興味を引かれる。心を奪われる。
パンフレットに書かれているのは、ホテル内にある女性専用スパマッサージの案内だった。スパでのマッサージということは、エステやトリートメントに近いのだろうか。
「イリヤホテルなら質の高いサービスが受けられそう……」
その言葉はホテルのいち利用客としての感想だった。庶民の感覚では、宿泊どころか施設を利用するだけでも尻込みしてしまう『イリヤホテル東京ルビーグレイス』。そのホテル内のサービスならば、きっと最高の心地良さが味わえるだろうと思う。
(こういうところで働けたらかっこいいよね……)
けれどあかりの中にはすぐに違う視点からの感想が生まれる。