偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない

 その言い方だとあかりがとんでもない食いしん坊みたいだ。

 いや、決して間違ってはいない。クリスマスディナーというだけあって、出された料理はどれも美味しかったし、食事に合わせたワインも美味しかった。

 それにフルコース料理ではあったがあらかじめ料理のすべてをダイニングに並べ、食べている間は誰にも邪魔されない二人きりの時間を楽しんだ。だから確かに、だらしのない幸せな表情ばかりだったかもしれない。

「わっ」

 その表情を再確認するためだろうか。

 響一に腰を支えられて腕を引っ張られると、そのまま彼のお腹の上に身体を乗り上げる態勢にさせられる。力を抜くとその重みで響一が押し潰されてしまうのではないかと焦ったが、響一は気にしていないようだ。

 あかりの腰に腕を回すと、さらに身体同士の距離を近付けるように引き寄せられる。じっと顔を覗き込まれる。

「俺も、幸せなんだ」
「きょう、いち……さん……」
「あかりと結婚してから、何をしてもうまくいく」

 まるであかりの方から響一を押し倒しているような状態になる。けれどそれがいいと……それが嬉しいと響一の瞳が語る。

「奏じゃない――ちゃんと『俺』を見つけて、認めてくれる存在に出会ったからかな」
「……?」

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