君が空を見上げるまで、僕は待ち続けます。
第一章 出会い
……出会いはそう、ほんとに偶然のことで。もしかしたら一生会うことはなかったかも、なんて、そうつくづく思うよ。……
最高気温が30℃を超えるような、そんなとてもとても暑い日。俺、縁下 慧は、サッカークラブの友達である稔が転んで足の骨折をし、1ヶ月程の入院が必要になったため、その様子見に病院に訪れていた。
「おぉ、慧!待ってたぞ!」
「せっかく顔見に来てやったのに。全然元気じゃねぇか。帰っていいか?」
「ダメダメダメ!もうすんごい退屈なの!夜7時過ぎたら外出禁止なんて、俺ら高校生には地獄よ?いい事なんて、可愛いナースさんとかナースさんとかさぁ」
「そればっかかよ」
笑いながら、持ってきた宿題を渡す。先程までヘラヘラと笑っていた顔が急に萎んで、それにまた大笑いしてしまった。
「宿題なんてしなくていいだろぉぉぉ」
「文武両道ってやつだ。頑張れ」
「うそぉぉ」
ちなみに、今回の提出期限はまだ大分先だから、急ぐ必要はないのだが。…絶対にそんな事は言ってやらない。
「提出期限は?」
「うーん、いつだったかなぁ。」
「絶対すぐじゃん!もぉぉ」
「看護師さんに見惚れてるからだ。」
シャーペンを手渡すと、しぶしぶ宿題を始める。余程面倒臭いのだろう。字が歪みまくってほぼ解読不能状態。これじゃあ持って行ったとしてもやり直し喰らうのがオチだろうなぁ、と思いつつも、稔の宿題終了を静かに待つことにした。
「そういえば、皆元気してる?」
「あぁ、元気だよ。お前がいないからな、今のうちに上手くなってやろうって張り切ってる」
「やっぱり、俺ってば、サッカー上手いもんなぁ」
「サッカー:だけは:の間違いな」
「うーん、認める」
「だろ?」
他愛もない話で盛り上がっていたら、気が付いた時には外は暗くなり始めていた。一番星が輝き、太陽は反対側に姿を隠そうとしている。
立ち上がり、帰ろうとしているものの、稔はなかなか離してくれず、結局帰るのは太陽が沈みきり、満月が顔を出した、真っ暗な時間になってしまった。俺自身、宿題なんてやってないし、なんなら今日この後サッカーの練習でもしようかと思っていたのだが。しつこい友達だ。そんなところが大好きでもあるのだけれど。
「帰るな。」
「えぇ、もうちょっといてよ」
「俺にも予定があるんだ。明日また来るから」
「んぅぅぅ、いいよ」
「うん。じゃあね」
「バイバイ!」
病室の扉をそっと閉める。来た時はたくさんの人が出入りしていたのだが、今はシーンと静まり返っている。病院ならでは、とでも言うのだろうか。あまり快適な静けさではなく、稔が離してくれなかったのも何となく分かるような気がした。
「すいません、帰ります。」
受付に座っている看護師さんに声をかける。実の所、ここの病院は稔の伯父がけいえいしていて、結果俺は面会時間外もここにいることが許されている。
「はいはい、いつもありがとねぇ。稔くん、貴方が居ないと暗くて。早くサッカーやらせてあげたいんだけどさ。」
「あのテンションはずっと一緒だとちょっとうるさすぎますけどね。」
「あらあら。今日はありがとう。また顔見せてやってね。」
明るく、元気な稔はもう看護師さんとも仲良くなったのだろう。一礼をして病院を出た。昼間はあんなに暑かったのに、ほんの少し太陽が隠れただけで、あっという間に肌寒くなってくる。夜空に輝く星たち。なんて言うんだったかな、ベガとかアルタイル…とか。そんな感じの星たちがなんだか、今日は少し違って見えて。そっと手を伸ばしていた。
最高気温が30℃を超えるような、そんなとてもとても暑い日。俺、縁下 慧は、サッカークラブの友達である稔が転んで足の骨折をし、1ヶ月程の入院が必要になったため、その様子見に病院に訪れていた。
「おぉ、慧!待ってたぞ!」
「せっかく顔見に来てやったのに。全然元気じゃねぇか。帰っていいか?」
「ダメダメダメ!もうすんごい退屈なの!夜7時過ぎたら外出禁止なんて、俺ら高校生には地獄よ?いい事なんて、可愛いナースさんとかナースさんとかさぁ」
「そればっかかよ」
笑いながら、持ってきた宿題を渡す。先程までヘラヘラと笑っていた顔が急に萎んで、それにまた大笑いしてしまった。
「宿題なんてしなくていいだろぉぉぉ」
「文武両道ってやつだ。頑張れ」
「うそぉぉ」
ちなみに、今回の提出期限はまだ大分先だから、急ぐ必要はないのだが。…絶対にそんな事は言ってやらない。
「提出期限は?」
「うーん、いつだったかなぁ。」
「絶対すぐじゃん!もぉぉ」
「看護師さんに見惚れてるからだ。」
シャーペンを手渡すと、しぶしぶ宿題を始める。余程面倒臭いのだろう。字が歪みまくってほぼ解読不能状態。これじゃあ持って行ったとしてもやり直し喰らうのがオチだろうなぁ、と思いつつも、稔の宿題終了を静かに待つことにした。
「そういえば、皆元気してる?」
「あぁ、元気だよ。お前がいないからな、今のうちに上手くなってやろうって張り切ってる」
「やっぱり、俺ってば、サッカー上手いもんなぁ」
「サッカー:だけは:の間違いな」
「うーん、認める」
「だろ?」
他愛もない話で盛り上がっていたら、気が付いた時には外は暗くなり始めていた。一番星が輝き、太陽は反対側に姿を隠そうとしている。
立ち上がり、帰ろうとしているものの、稔はなかなか離してくれず、結局帰るのは太陽が沈みきり、満月が顔を出した、真っ暗な時間になってしまった。俺自身、宿題なんてやってないし、なんなら今日この後サッカーの練習でもしようかと思っていたのだが。しつこい友達だ。そんなところが大好きでもあるのだけれど。
「帰るな。」
「えぇ、もうちょっといてよ」
「俺にも予定があるんだ。明日また来るから」
「んぅぅぅ、いいよ」
「うん。じゃあね」
「バイバイ!」
病室の扉をそっと閉める。来た時はたくさんの人が出入りしていたのだが、今はシーンと静まり返っている。病院ならでは、とでも言うのだろうか。あまり快適な静けさではなく、稔が離してくれなかったのも何となく分かるような気がした。
「すいません、帰ります。」
受付に座っている看護師さんに声をかける。実の所、ここの病院は稔の伯父がけいえいしていて、結果俺は面会時間外もここにいることが許されている。
「はいはい、いつもありがとねぇ。稔くん、貴方が居ないと暗くて。早くサッカーやらせてあげたいんだけどさ。」
「あのテンションはずっと一緒だとちょっとうるさすぎますけどね。」
「あらあら。今日はありがとう。また顔見せてやってね。」
明るく、元気な稔はもう看護師さんとも仲良くなったのだろう。一礼をして病院を出た。昼間はあんなに暑かったのに、ほんの少し太陽が隠れただけで、あっという間に肌寒くなってくる。夜空に輝く星たち。なんて言うんだったかな、ベガとかアルタイル…とか。そんな感じの星たちがなんだか、今日は少し違って見えて。そっと手を伸ばしていた。
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