ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・
「日詠先生、私が何か?」
『いや、何も。』
「でも、谷本さんが。」
俺を追い込むかのような口調の美咲。
やっぱり火の粉が飛んで来たか
今更・・・伶菜・俺・美咲・森村の間で昔あった恋愛事情を想い起こしていたなんて・・・わざわざ言うまでもないしな
少なからず美咲の心も傷つけたと思うし
ズルいとわかってはいるけれど話題を逸らすしかないだろう
『思い出した。貰って嬉しいクリスマスプレゼントってどんなものがあるか、美咲にも聞いてみようかなと思ったんだ。』
「クリスマスプレゼント・・・ですか?伶菜さんに・・ですか?」
『そう。なかなか思いつかなくてさ。』
悩ましげな表情で顎に手を当てて、何か考え込み始めた様子の美咲。
おそらく話を逸らせたようだと密かに安堵していた矢先、
「日詠先生ってば無神経~!!!!・・・美咲先生に伶菜さんへのクリスマスプレゼントを相談するなんて・・・・」
どうやら俺が地雷に踏んだらしいことを谷本さんに指摘されてしまった。
今日の俺は何をやらせてもよくない方向に風が吹いているようだ
「別に無神経とか気にしないですけど・・・でも、あたしもピンとこないです。あたし自身は普段はちょっと手が出ないような高価な本とかをクリスマスプレゼントとしてもらうことにしていたので、あんまり参考にならないかと。」
あまり参考にならないとか思わないで欲しい
俺の無神経さを気にしないでくれたのならそれでいいんだ
美咲にこれ以上嫌な想いとかさせたくないし
つい話を逸らそうと伶菜のプレゼントのことを美咲に訊ねてみたけれど
やっぱり自分で考えなきゃいけないよな
「美咲先生らしいですね、本とか・・・・・そうだ、日詠先生、あたしがいるじゃないですか~!!!!!伶菜さんとお友達なあたしが!」
谷本さんが祈るように両手を組んで上目遣いで俺をじっと見つめている。
「あたし、結構、センスいいですし~♪」
確かに谷本さんのおかげで、前はこのナースステーションの敷居を高く感じていたらしい
伶菜もここに近付きやすくなったみたいだし
奥野さんとのキス事件の時も、伶菜の傍で励ましてくれていたのも彼女だったっけな
伶菜にとっても信頼できる彼女に聞いてみるのもいいのかもしれない
『それじゃ、お言葉に甘えて・・・・谷本さんはどんなものがいいと思う?』
「そりゃ~伶菜さんといえば、ずばりスイーツでしょ♪時々、仮眠室に置いてある御菓子をおすそ分けすると本当に嬉しそうな顔するもん。」
『・・・・・・』
やっぱり甘いモノか
俺も散々、甘いモノで伶菜を釣り上げたしな
御馴染みのフルーツ大福やバームクーヘン以外に
新たなスイーツを発掘するっていうのもいいのかもしれない
若い女性達が行列しているところに一緒に並ぶのは少々照れくさいけれど
「谷本~!!!!!バイタル表を書く手を止めたまま、随分、楽しそうな話をしてるじゃない。伶菜ちゃんへのクリスマスプレゼント・・・とか?・・・あら、日詠先生に美咲先生まで御揃いで。」
背後から聴こえてきたいつもよりも甲高い声。
厄介な人間に見つかった・・・