ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・
「ナオフ・・・いやいや、日詠先生~。病棟に忘れ物ですよ~。これ、落し物になっちゃうと大変。」
俺が産科病棟のナースステーションに忘れてきてしまったらしい執筆中の論文の入ったファイルを福本さんが届けてくれた。
「勉強熱心で感心、感心。それにしても、日詠先生もナースステーションであんな風に楽しそうな会話をできるようになったのにも感心しますわ~。」
『・・・・・・・・・・』
楽しそうってちょっと微妙だが、
確かに以前は業務に関する事柄以外の話とかをあそこですることは殆どなかったかもしれない
「伶菜ちゃんが産科の症例にも臨床心理士として参画してくるようになってからよね・・・ナオフミくんがそうやって変化を遂げたのも。」
言われてみればそれもそうだ
“伶菜は俺の妻だ”ということを
そこで自分から打ち明けるようなマネをした
『そうかもしれませんね。』
その頃からだろうか?
俺が業務以外のことでもここの看護師さん達と会話をする機会が増えたのは・・・
「あっ、違うわ。ナオフミくんが変化を遂げ始めたのは、救急車で伶菜ちゃんがここへ運ばれてきた時からだったかもしれないわね。」
救急車?
妊娠している伶菜が電車に飛び込もうとしているところを俺がなんとか制止し、ここに救急搬送した時のことだな
ずっと捜していた伶菜に俺が二十数年の時を経て再会した時だ
「あれからナオフミくんは変わったわ。なんでもスマートにこなし、他人という存在を自分の心の中に踏み込ませない空気を持ったあなただったけれど・・・・・伶菜ちゃんという守るべきものができて、他人との繋がりも表面上ではなく、より深いところで求めるようになった。」
確かに伶菜と再会する前
病院を離れたプライベートな時間で心を許すことができるのは入江さんぐらいだけだったかもしれない
今から思い返せば、当時付き合っていた女性にも心を許していたとは言い難い
それでも、仕事が多忙だったから深く考え込んだりするどころか何とも思わなかった
「ナオフミくんが生き別れた伶菜ちゃんをずっと想い続けているという事情を知っていたあたしでさえ、あなたが伶菜ちゃんと再会できるなんて思ってはいなかった・・・・それがきっと切っても切れない縁・・・そして運命というものなのね。それが今のあなた達の幸せな生活に繋がっている。」
福本さんが言う通り、今の俺の幸せは伶菜なしではあり得ない
だから彼女を
もう2度と手放したりせず
できるだけ哀しい想いをさせたりもせず
どんな時でも彼女を守り、
ずっと彼女らしい笑顔でいさせてやりたい
それが今の、
そして
これからもずっと続く俺の願い
『・・・・伶菜にちゃんと言ってやらなきゃな。』
「どういうこと?」