ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・
『あの、何か?』
「詳しいことは後程お話致しますが・・・・あの・・日詠先生が・・・とにかく急いでこちらへ来て頂けますか?」
きっと胸騒ぎは気のせいだと思おうとしている私とは対照的に秘書の片平さんは少々慌てた様子で私を急かした。
病院内でも冷静に仕事をこなす美人敏腕秘書として名が知られている片平さん。
その彼女が慌てている様子を電話越しで感じ取った私は
病院でただごとではないことが起きているんだと覚った。
しかもナオフミさん絡みで。
『わかりました・・・・えっとその・・とにかく・・・行きます!!!!』
「あっ、あのっ・・・くれぐれも気をつけてお越し下さい」
とりあえず急がなきゃいけないという状況であることを把握した私は“わかりました”という返事をしないまま電話を切った。
現在、育児休暇中の私がこうやって急遽外出することは殆どない
だから、こういう時は何から手をつけてよいのかわからずについオロオロしてしまう
子供達のお出かけグッズの準備が先か?
家の中の戸締りが先か?
それともそれらよりも先にやらなきゃいけないことがある?
でも片平さんの慌てた様子から
そうやって迷っている時間もなさそう
もうとりあえず動くしかない!!!!
『祐希。今から、今からね病院行くから!!!!』
「えっ?ケーキは?」
『ケーキ?!・・・ケーキって・・・今はそれどころじゃなさそうなのっ・・・・・陽菜を起こしてくるから準備して!』
大きなトートバックに陽菜の着替えやオムツを放り込んでから、寝室で寝ていた陽菜を抱き上げた。
『陽菜~、寝たばかりなのにゴメンね!!!!』
「ママ、じゅんびできたよ!」
『準備できた?!・・・じゃあ、行くよ!』
右手でまだ半分寝ているような陽菜とトートバックを抱え、左手で目をギラギラさせている祐希の手を引いて動き始めた私は
『病院!!!!!!』
「へっ?お客さん、どこの病院ですか?」
「ナオフミさんの!!!!・・・・・あっ違う、名古屋南桜総合病院までお願いします。運転手さん、できるだけ急いで下さい!!!!!!』
新笠寺駅前でタクシーを拾って乗り込んだ。
いち早く目的地に着かなきゃと思っているのに、目的地に着くのが怖いとも思いながら。