ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・




『・・・・・・・・・?』



返事が聞こえてこなかった。

覚悟を決めなきゃと思いながらも
やっぱり現実は違うということを求めた私は

・・・コンコン!!!

さっきよりも強めにドアを叩いた。
今度こそちゃんとノック音が聴こえるように。

そして中にいるであろう人の返事を聞き漏らしていたのかもしれないと思った私は
ドアに自分の耳を当てて返事を聞き取ろうとした。



けれども
返事は一切聴こえなかった。

返事が聴こえないことも現実の一部。
本当に怖くなった。

でも、百聞は一見に如かずと自分に言い聞かせ、
震えていた手に力を込めて、とうとう病室の引き戸を引いた。




『・・・ナオフミ、さん・・・・・?』





私がとうとう足を踏み入れたそこは他の病棟よりも広めの特別個室。

ドアを開けてすぐにベッドが見えるという通常の個室ではなく
そこからすぐに見えたのは
入り口付近にある洗面台と個室専用トイレのドア、そして
ベッドがある空間に繋がる廊下だけ。



中に入り、おそるおそる廊下を進みながら、少し視線を前方へズラすと
ベッドの足元部分とベッドの傍らに置かれた椅子、そしてその背もたれ部分にかけられた白衣があって。
その白衣のポケットにぶら下がっているナオフミさんらしき男性の写真が貼り付けられた名札も遠目だけど見えた。


ナオフミさんの身に着けていたであろう白衣の存在がベッドの足元部分の布団の膨らみは彼の足であるということを物語っていた。




やっぱりここにいたんだ
しかもベッドの上に・・・・



一体どうしたの?

こんなことになっているのは
いったい・・・・なぜ?




『ナオフミさん・・・・・?』




彼の名を呼ぼうとするも小さな声しか出なくて。
そのせいもあってか、やっぱり聴こえてこない彼の返事。

自分の声で反応してもらうのは無理だと思った私は
相変わらずおそるおそるベッドがあるほうへ更に歩を進めた。



ベッドのフットボード
ベッド柵から少しはみ出た白いシーツがかけられた掛け布団
Yシャツらしき衣服に纏われている幅広めの肩



そして、上から2つ目まで外されたボタンから見えた首筋


ここまで見えてきたものの特徴から
そこに横たわっているのがナオフミさんであることを確信した私は勇気を出して、自分の視線を彼の首元からもっと上へ見上げた。






『・・・・・ナオフミ、、、さん?』



その体は動くどころか、微動だにしなくて
目を閉じたままの彼。



その顔を見て、もう一度彼の名を呼んだ。

けれども聴こえてきたのは
病室の壁に取り付けられている掛け時計の秒針が時を刻む音だけ。



『・・・・ナオフミさん・・・ナオフミさん?・・・ナオフミさん!!!!!!、、、、、、いやぁああああ』


私はその秒針の音を掻き消してしまうような叫び声を上げながら、彼が横たわっているベッドサイドに勢いよく伏せた。



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