ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・
『御無沙汰しております。』
「今日は仕事帰り?」
『ええ。』
声をかけてきたのは、見慣れないスーツ姿の先輩産婦人科医師奥野さん。
いつも見ていたのは、ワインレッドカラーのスクラブ(手術着)に白衣を羽織った姿の彼女だったから一瞬別人に見えた。
「あたし、今から症例報告だよ~・・・ちゃんとプレゼンできるか正直怪しい。」
『奥野さんなら大丈夫ですよ。プレゼンが怪しいと思うのは・・緊張しているからではなく、昨夜、一睡もせずにプレゼンを作っていたからですよね?』
「よく知ってるじゃん。」
『・・・後輩ですから。』
「可愛くない後輩~!!!!!そろそろ出番だから行くわ。」
『健闘を祈ります。』
「プレッシャーかけるとか、やっぱ可愛くないわね。伶菜ちゃんにチクるわよ。じゃあね。」
珍しく弱音を吐いた奥野さんだったけれど、
その後、興味深い症例報告をした彼女を改めて尊敬できる機会となった。
研修会後、帰路の向かうエレベーターの前で再び奥野さんに出くわした。
本人曰く、プレッシャーがかかっていたらしい症例報告を終え、解放感丸出しの奥野さん。
こういう時の彼女はいつも以上に怖いものナシだ
・・・現に臨床心理士である伶菜の育児休暇が明けたら、彼女を奥野さんが従事している病院に返せとか言い出している
・・・伶菜へのクリスマスプレゼントを準備していないことに冷たい視線を投げかけられたりもしている
・・・俺のクリスマスイヴの予定を聞き出した上で、その日、森村が伶菜に近付くという動向予定まで知らせてきたりもして
それだけに留まらず、奥野さんは俺が聞き流せない森村の怪しい企みまで口にしながら不安を煽る始末
その結果、その不安に揺さぶられてしまった俺は
慌てて電話で同僚後輩医師の和田にクリスマスイヴの日の超勤をお願いしなくてはならない状況に陥った。
勤務を休みにできないために、たった2時間で
自宅に戻って伶菜の無事を確認するためにだ