ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・
それなのに

「ちゃんと伶菜ちゃんへのプレゼント、考えるのよ!わかった?」


伶菜のことを考えてくれることに相変わらず躍起な奥野さんは
俺のそのもうひとつの想いなんてどうやら汲み取っていないようだ


まあ、俺が奥野さんの目先を変えることなんて
そんなことできやしないんだろうけどな



『ハイハイ。わかりました。』

「今、聞き流したでしょ?また、痛い目に遭いたい?」



奥野さんにとっての痛い目に遭いたい=俺に後ろめたい想いを抱かせる


その偏った考え方でキスを奪われた俺は
伶菜に対する後ろめたい想いを抱かされて
かなりのダメージを負った

口先だけの脅しとは言え、前科があるこの人の言葉を冗談と思えない





『勘弁して下さい。奥野さんも反省したんじゃ・・・』


伶菜のことになると
この人もあり得ない手段とか使ってくるしな

彼女のことを大切に想う故の行動だろうから
本当ならば感謝すべきなんだろうけれど

そうやって奥野さんが動くと俺はやっぱり大きなダメージを受けるんだ



だから、伶菜に関することで奥野さんをあり得ない方向に動かさないようにすることが一番の得策なんだろう



「そうだったわね。伶菜ちゃんを泣かせることは本望じゃないわ。だから、日詠クンがちゃんと伶菜ちゃんを笑顔にするようなことをするのよ。」

「了解です。」

俺に痛い目に遭わせることより伶菜のことを一番に考えてくれているらしい奥野さんの言葉に密かに安堵しながら、今度こそは素直に返事した。


だが、すぐに伶菜が笑顔になるような名案が思いつくはずがなく、宿題!と肩を叩いてきた奥野さんと別れた後の帰り道。

奥野さんに言われた通り、伶菜を笑顔にするようなプレゼントは何かを考えてみた。


『何がいいんだろうか?・・・いつもの甘いモノは食うとなくなっちゃうしな。』


自宅の最寄駅である新笠寺駅で電車を降りて、改札口へ繋がる線路直下の地下道をひとり呟きながら歩いた。
履き慣れない革製のビジネスシューズが奏でるカツカツという音を響かせながら。



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