#青春リクエスション
「それでね、せっかくだから君のリクエストをぜひ叶えてあげたいと思って!」
「え?」
“好きな人とデートがしたい#青春リクエスション”
私が願った呟き、まさかこんなことになるなんて。
「…だけど、注意事項読んでないよね?」
「注意事項…?」
「ほらここ、見て」
とんとんっとスクロールされていくスマホの画面、一番下にそれは書いてあった。
「人を特定する書き込みはNGなんだよ。書き込んだ側の特定も、書かれた側の特定も、個人情報保護法があるからね」
「そーゆうとこマジメなんだよなノギは」
そうなんだ…、余計恥ずかしいじゃんそれ。
そっか、この呼び出しってそーゆうことか。
叶えてくれるために呼ばれたんじゃない、ちゃんと注意事項読めよって言う指摘だ。
「でも思ったけど…好きな人は別に特定はされてない、よね」
「?」
顎に手をあてうーんと考えた後、ぽそりと呟いた。
「ルールはSpeaksに特定の人物の名前を書いた場合認めないとしてるだけで、好きな人だけでは誰かわからない…」
「いや、よくないでしょ」
自己紹介をして以来黙ったままだった藤代先輩が口を開いた。真顔で、冷淡な態度で。
「………。」
「よくないわよ!」
「………、いや大丈夫!イケるよ、花絵ちゃん!」
ぱぁーっと表情を明るくした野木会長がどさくさ紛れに藤代先輩の手を握ろうとして避けられていた。
いや、待って、でも。
好きな人特定しないデートなんて出来るの?
「えっと、君…!名前は?アカウント名じゃなくて、名前!」
何事もなかったように野木会長がくるっと振り返り、パイプ椅子に座っている私の前に立った。
「え…、井住由夢です」
「由夢ちゃんね!」
何か思いついたのかイキイキした表情をしている。
「俺のこと嫌い?」
「え!?」
「嫌い?」
「いや、嫌いではないですけど…」
「じゃあ好きってことだね!」
「!?」
嫌いの反対は好きだけど、でも嫌いじゃないから好きってわけでもないような。というかこの話は何なの…
「OK、デートしよう!俺と!」
野木会長がしゃがみ込んで上目遣いで私を見た。
野木会長が微笑んでいる。
まさかこんなことになるなんて。
あの呟きがこんなことになるなんて。
今目の前で野木会長が私に微笑みかけてるなんて…
「ちょーっと待ってください!」
「え、凛空ちゃん…」
私と野木会長の間にサッとパーにした右手をねじこませた。
「野木会長、彼女いますよね?藤代先輩と付き合ってますよね!?」
ピシッと伸びた人差し指で藤代先輩を指さした。
凛空ちゃんも知ってたんだ。私が知らなかっただけで本当に有名だったんだ、この話。
「それは…」
「付き合ってないからっ!!!」
数分前に聞いた低音が再び響いた。今度はそこそこ大きな声で。野木会長の声なんてすぐにかき消された。
「やめてくれる?勝手な噂信じるの」
長い艶やかな黒髪を右手でさらっと後ろになびかせた。はぁっと強めの息を吐きながら。
「………付き合ってないんですか?」
チラッと下を見る。
「付き合ってないよ」
にこっと笑ったから。
「だから俺とデート、どう?」
頷いてしまった。
「お願いします…!」
私の初めてのリクエスト、叶えてもらえることになった。
「え?」
“好きな人とデートがしたい#青春リクエスション”
私が願った呟き、まさかこんなことになるなんて。
「…だけど、注意事項読んでないよね?」
「注意事項…?」
「ほらここ、見て」
とんとんっとスクロールされていくスマホの画面、一番下にそれは書いてあった。
「人を特定する書き込みはNGなんだよ。書き込んだ側の特定も、書かれた側の特定も、個人情報保護法があるからね」
「そーゆうとこマジメなんだよなノギは」
そうなんだ…、余計恥ずかしいじゃんそれ。
そっか、この呼び出しってそーゆうことか。
叶えてくれるために呼ばれたんじゃない、ちゃんと注意事項読めよって言う指摘だ。
「でも思ったけど…好きな人は別に特定はされてない、よね」
「?」
顎に手をあてうーんと考えた後、ぽそりと呟いた。
「ルールはSpeaksに特定の人物の名前を書いた場合認めないとしてるだけで、好きな人だけでは誰かわからない…」
「いや、よくないでしょ」
自己紹介をして以来黙ったままだった藤代先輩が口を開いた。真顔で、冷淡な態度で。
「………。」
「よくないわよ!」
「………、いや大丈夫!イケるよ、花絵ちゃん!」
ぱぁーっと表情を明るくした野木会長がどさくさ紛れに藤代先輩の手を握ろうとして避けられていた。
いや、待って、でも。
好きな人特定しないデートなんて出来るの?
「えっと、君…!名前は?アカウント名じゃなくて、名前!」
何事もなかったように野木会長がくるっと振り返り、パイプ椅子に座っている私の前に立った。
「え…、井住由夢です」
「由夢ちゃんね!」
何か思いついたのかイキイキした表情をしている。
「俺のこと嫌い?」
「え!?」
「嫌い?」
「いや、嫌いではないですけど…」
「じゃあ好きってことだね!」
「!?」
嫌いの反対は好きだけど、でも嫌いじゃないから好きってわけでもないような。というかこの話は何なの…
「OK、デートしよう!俺と!」
野木会長がしゃがみ込んで上目遣いで私を見た。
野木会長が微笑んでいる。
まさかこんなことになるなんて。
あの呟きがこんなことになるなんて。
今目の前で野木会長が私に微笑みかけてるなんて…
「ちょーっと待ってください!」
「え、凛空ちゃん…」
私と野木会長の間にサッとパーにした右手をねじこませた。
「野木会長、彼女いますよね?藤代先輩と付き合ってますよね!?」
ピシッと伸びた人差し指で藤代先輩を指さした。
凛空ちゃんも知ってたんだ。私が知らなかっただけで本当に有名だったんだ、この話。
「それは…」
「付き合ってないからっ!!!」
数分前に聞いた低音が再び響いた。今度はそこそこ大きな声で。野木会長の声なんてすぐにかき消された。
「やめてくれる?勝手な噂信じるの」
長い艶やかな黒髪を右手でさらっと後ろになびかせた。はぁっと強めの息を吐きながら。
「………付き合ってないんですか?」
チラッと下を見る。
「付き合ってないよ」
にこっと笑ったから。
「だから俺とデート、どう?」
頷いてしまった。
「お願いします…!」
私の初めてのリクエスト、叶えてもらえることになった。