#青春リクエスション
授業が終わる。

今日も寧々は部活で、凛空ちゃんは颯爽と駆けて教室を出て行った。

その背中を見つめながらスクールバッグを肩に掛ける。

早くホームルームが終わったおかげで電車だって間に合う。だから今日は有意義に時間が使える。

帰って何しようかな、夕方の再放送ドラマでも見ようかな。

あ、でもそろそろテスト週間に入るから勉強もしないとな…

あとは…

教室を出た。

ガヤガヤと賑わう廊下で、歩き出した足が止まった。

部活へ行ったり、下駄箱に向かったり、図書室へ勉強しに行ったり、別のクラスの友達のところへ…みんなそれぞれ目的に向かって歩いているのに。


“北校舎の最上階4階、左奥の教室”


頭に浮かぶのはそればっかりで。

考えるだけでドキドキした。


私もそこへ行きたい。


もう一度あの扉を開きたい…!

ブブッ、とスマホが振動した。
スカートのポケットから取り出して確認するとSpeaksに返信が来ていた。


“好きな人とデートがしたい#青春リクエスション”


私が呟いたその下に@blue_spring(青春リクエスション)からの返信。


“デート楽しかったね!”


次の一歩はもう決まっていた。


北校舎の最上階4階、左奥の教室…


目指す先はそこだった。

走ってやって来た扉の前、心臓の音が響いてる。

ドッドッと、扉にかけた手が少しだけ震えた。

2回目のこの扉は1回目よりも緊張でドキドキが止まらなかった。

でもあの時のドキドキとは違って、早く扉の向こう側に行きたかったんだ。

「し、失礼しますっ!」

ガラッと勢いよく扉を開けた。

開いた扉にみんなが私の方を見た。

藤代先輩に馬渕先輩に、凛空ちゃんに…暁先輩。

にこりと微笑んで。

「由夢ちゃん、待ってたよ」

だから、その扉の向こう…



ゆっくりと一歩踏み入れた。
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