#青春リクエスション
あれから1週間後、テストまでもあと1週間になった。

この日の学校は朝から騒がしかった。

昨日夜ふかししちゃったせいで今日はちょっと眠い。ふわーっとあくびをしながら下駄箱で上履きに変え廊下に出ると、掲示板の前に人だかりが出来ている様子…

「………。」

わいわいと集まって、その中から人を掻き分けながらちょっと小さめの凛空ちゃんが出て来た。

「あ、由夢!おはよう!」

「おはよう」

「この答え何だと思う?」

「え、答え…」

この人だかりの中心にある張り出された1枚の紙の写真を撮って見せて来た。

「あ、これあの数式だよ。ここにX代入して」

「え、そんでどうすんの?」

「んーと、そしたら…」

「逆だよ、Xを代入するのはこっち」

突如現れた細くて長い指、とんっと凛空ちゃんのスマホの画面を指さした。

「会長!」

「おはよう。凛空くん、由夢ちゃん」

その瞬間廊下中に溢れるキャーという艶めいた声。

そうだ、暁先輩に近付きすぎて忘れてたけど学校のアイドル的存在だった。

久しぶりに聞いた歓声にビクッてなった。

やばい、その後ろで花絵先輩が表情筋を失っている。
出てる、鉄の女!

「みんな何してるの?」

暁先輩が視線を人だかりが出来た方に変えると一斉にみんながその場を開けた。

「…何これ?謎解き?」

掲示板に張り出された紙には問題が書いてる。

一見ポップに謎解きを気取ってるけど実際は今現在私たちが学んでいる最中、なんなら1週間後に始まるテスト範囲の問題が書いてあった。

「…この答えは26だね」

「26なんすか!ありがとうございます、次に進めます!」

周りもざわざわと答え合わせを始めた。じゃあ次のも探してみようかなんて言いながら、人だかりが少しづつ消えていく。

その場に残されたのは私と暁先輩と花絵先輩。

「………。」

さっきからずっと花絵先輩は表情筋が迷子らしい。

「ふっ、ふっ、…ふふっ」

それとは正反対に声が溢れてしょうがない…暁先輩はニヤリと笑った。

「どう?花絵ちゃん!いい感じじゃない?」


これも全部暁先輩の狙い通りに、計画通りにことが進んだ証拠だった。


学校中に張り出された紙たち、フォントや配置に拘った目を引きやすいデザインの謎解きという名の“テスト範囲”とされる問題が書かれた紙たち。


私たちがこの1週間ひったすらに作った紙たち…!!!


昨日もギリギリやってたからおかげで今日はめっちゃ眠たいし!

「ね、由夢ちゃん!これはワクワクしかないよね!」

子供みたいにに暁先輩が笑ってる。

これが成功?とはまだ思えないんだけど…という私(と、きっと花絵先輩)の心配をよそにこれが思いの外大盛り上がりした。
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