#青春リクエスション
知らぬうちに張り出された半ばイタズラのような出来事に先生たちは早急に剥がす処置が行われる…
「ねぇ中島センセ!これどうやって解くの?」
「…それは先週教えたでしょ」
「もう1回教えて!これ解けないと次にいけないの!」
「…だからこれは」
はずだった。
剥がそうとすると生徒たちに質問責めされ結局教えてる間に次々と人が集まり剥がせないという事態に先生たちもてんてこ舞いだった。
「中島先生~、これってこれでいいの?」
「全然違います、もっと基礎から教えましょうか?」
「えーーー、早めに教えて!じゃないとあれ終わっちゃうから!」
「勉強に早めも遅めもありません」
この状態に暁先輩はニヤニヤが止まらなかった。
マジでわかりやすくニヤニヤしてるもんだからそれと比例していくかのように花絵先輩のイライラが募っていった。
「ねぇーーー、中島ぁ!今度こっちだってば!」
「先生を呼び捨てにしないでください!ちょっとまだこっちで…っ」
おそらく新任教師だからという理由で張り紙を剥がすことを命令された中島先生が誰よりもテンパっていて、これにはちょっと気の毒だった。
上と下に挟まれ、これが社会の縮図だよね。
「暁先輩、教えてあげたらいいんじゃないですか?先輩、学年1位ならあのくらい簡単じゃないですか」
目の前に張り出されてるのは高校1年生の問題、2年の暁先輩にはもう終わったところ。
「んー、まぁ解けなくはないけど」
きっと簡単に解けちゃうだろうと思って声を掛けてみたけど、暁先輩は全然その場から動かない。腕を組んだまま、じぃーっとその場を見つめていた。
「?」
それに引き換え、中島先生はどんどん埋もれていく。
あ、やばい。180㎝近い身長を誇る中島先生でもこれだけ人が集まれば見えなくなっていくんだ…と思っていた時、暁先輩が一人の女の子に声を掛けた。
「ねぇ、キミ。数学は得意?」
「え…」
人だかりから少し離れたところで、傍観するように立っていたポニーテールが特徴のメガネをかけた女の子。
確か隣のクラス…?だったような、たぶん。
見るからに大人しそうで、特に接点もないから話したことないし、もちろん名前も知らない子だった。
「その答え、合ってるよ」
女の子の手にはノートがあり、そこには張り出された紙と同じ問題が書かれて、さらに導き出された答えも書いてあった。
「本当…ですか?」
「君、名前は?」
「…っ、松倉です」
「松倉さんね、よくできました」
にこりと暁先輩が笑う。
この微笑みは体育館で初めて見た時のあの微笑みだ。
くるっと人だかりの方に方向転換した暁先輩が大きく息を吸った。
「ねぇ、みんな!松倉さんもうこの問題解けたって!教えてもらったら?」
ガヤガヤと中島先生が溺れる中心に聞こえるように、大きな声で問いかけた。
一斉に視線が中島先生から切り替わる。
「松倉さん教えて!」
「あたしもっ」
「マジ中島役に立たねぇんだよ」
「中島先生です!!」
あっという間に松倉さんの周りにも人だかりが出来て、私たちはまたそこからも追い出されてしまった。
…でも。
暁先輩は笑っていたから。
「ねぇ中島センセ!これどうやって解くの?」
「…それは先週教えたでしょ」
「もう1回教えて!これ解けないと次にいけないの!」
「…だからこれは」
はずだった。
剥がそうとすると生徒たちに質問責めされ結局教えてる間に次々と人が集まり剥がせないという事態に先生たちもてんてこ舞いだった。
「中島先生~、これってこれでいいの?」
「全然違います、もっと基礎から教えましょうか?」
「えーーー、早めに教えて!じゃないとあれ終わっちゃうから!」
「勉強に早めも遅めもありません」
この状態に暁先輩はニヤニヤが止まらなかった。
マジでわかりやすくニヤニヤしてるもんだからそれと比例していくかのように花絵先輩のイライラが募っていった。
「ねぇーーー、中島ぁ!今度こっちだってば!」
「先生を呼び捨てにしないでください!ちょっとまだこっちで…っ」
おそらく新任教師だからという理由で張り紙を剥がすことを命令された中島先生が誰よりもテンパっていて、これにはちょっと気の毒だった。
上と下に挟まれ、これが社会の縮図だよね。
「暁先輩、教えてあげたらいいんじゃないですか?先輩、学年1位ならあのくらい簡単じゃないですか」
目の前に張り出されてるのは高校1年生の問題、2年の暁先輩にはもう終わったところ。
「んー、まぁ解けなくはないけど」
きっと簡単に解けちゃうだろうと思って声を掛けてみたけど、暁先輩は全然その場から動かない。腕を組んだまま、じぃーっとその場を見つめていた。
「?」
それに引き換え、中島先生はどんどん埋もれていく。
あ、やばい。180㎝近い身長を誇る中島先生でもこれだけ人が集まれば見えなくなっていくんだ…と思っていた時、暁先輩が一人の女の子に声を掛けた。
「ねぇ、キミ。数学は得意?」
「え…」
人だかりから少し離れたところで、傍観するように立っていたポニーテールが特徴のメガネをかけた女の子。
確か隣のクラス…?だったような、たぶん。
見るからに大人しそうで、特に接点もないから話したことないし、もちろん名前も知らない子だった。
「その答え、合ってるよ」
女の子の手にはノートがあり、そこには張り出された紙と同じ問題が書かれて、さらに導き出された答えも書いてあった。
「本当…ですか?」
「君、名前は?」
「…っ、松倉です」
「松倉さんね、よくできました」
にこりと暁先輩が笑う。
この微笑みは体育館で初めて見た時のあの微笑みだ。
くるっと人だかりの方に方向転換した暁先輩が大きく息を吸った。
「ねぇ、みんな!松倉さんもうこの問題解けたって!教えてもらったら?」
ガヤガヤと中島先生が溺れる中心に聞こえるように、大きな声で問いかけた。
一斉に視線が中島先生から切り替わる。
「松倉さん教えて!」
「あたしもっ」
「マジ中島役に立たねぇんだよ」
「中島先生です!!」
あっという間に松倉さんの周りにも人だかりが出来て、私たちはまたそこからも追い出されてしまった。
…でも。
暁先輩は笑っていたから。