#青春リクエスション
「いやー、大繁盛だったな~~~!」

放課後の生徒会室、大ご機嫌の暁先輩は窓の開いた外に向かって叫んでる。

「暁、寒いから閉めて」

花絵先輩に言われてすぐ閉めていたけど。

「でもすごかったですね、あんなに盛り上がるとは思いませんでした」

「要は気持ちの問題なんだよ」

「その気持ちが難しいんですけどね」

閉められた窓に背を向けもたれかかる暁先輩の隣で同じようにもたれかかり、先輩の横顔を見つめながら聞いていた。

「ちょっと見方を変えるだけで、変わることはたくさんあるんだから」

謎解き風にすればみんな勉強するんじゃないかって暁先輩の発想で行われた今回のリクエスト、普段はしたくない宿題もゲームになればみんな取っつきやすくなって参加してくれるだろう…そこを狙った戦略だった。

だけど、こんな盛り上がりを見せて終わるのはやっぱり暁先輩だからなんじゃないかって思った。

だってやっぱりこんなことしようなんて普通は思わないもん。

「暁先輩、私思ったんですけど」

「ん、なぁに?」

「これってテストはなくせないけどテストを楽しめるように変えるってことだったんですよね?」

「うん、そうだね」

「でもそんなリクエスト来てないじゃないですか」

「……。」

私の方を見た暁先輩と目が合った。

「叶えたのは別のリクエストだったんですよね?」


“友達が欲しいです”


あのポニーテールの女の子がこのリクエスターだったとは限らない、特定はしない主義だし個人的なリクエストには応えられないから。
でももしこれをキッカケにその知らない誰かがどこかで楽しんでくれていたら、それは青春リクエスションの意味がある。

「暁先輩はすごいですね」

「さぁ、どうかな?由夢ちゃんの思い過ごしかもよ?」

ははっと笑う姿に私もなんだか嬉しくなった。

「由夢ちゃんは楽しかった?」

「楽しかったです、すごく!」

いっぱい。とっても。この上なく。

また私の高校生活彩られた気がしたよ。
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