#青春リクエスション
「蕪木先生と明日の最終確認してOK出たから、予定通りよろしくね」

暁先輩が持って来た折りたたまれた横断幕を体育館の隅っこに置いた。
幕とは言え、ステージの上から吊るす結構大きな幕は折りたたまれるとドシッと響く重さがあった。

「ここでSpeaksの登録者数も確保したいから、“あっち”の方も頼むよ」

「一応用意はしてるけど、ぶっつけ本番だからな。しかもあんなイチかバチかな…」

明日の司会よりも不安そうに馬渕先輩がはぁっと息を吐いた。

「だってせかっくだからドッと増えるド派手な仕掛けやりたいでしょ」

「ノギはいいよ、大変なのは凛空の方だから」

「そうっすよ!今からめちゃくちゃ緊張してます!!」

「凛空くん期待してるから!で、花絵ちゃん明日の天気は?」

「晴れ時々曇り、ただし強風に注意。ご希望通り春一番が吹くわよ」

「お、絶好の新入生歓迎会日和だね!」

会議に参加してなかった私は全貌が全く掴めていない。知ってるフリをしてとりあえず“うんうん”とそれっぽく頷いた。もう今更聞ける雰囲気じゃなかったから。

「上手くいくといいよね!これで成功したら、生徒会としても青リクとしても印象に残るし一石二鳥!」

「生徒会がやってるってバレないように、ギリッギリだぞ」

「大丈夫だよ、失敗しなきゃ」

「失敗したら俺のせいですか!?せいですよね!?」

すでに追い込まれて瞳を潤ませる凛空ちゃんの肩をポンポンと暁先輩が叩いた。大丈夫、大丈夫って声を掛けながら。

「春ってワクワクするよね!春が来ますようにって言わなくても春は来るのにね!」


“春が来ますように♡#青春リクエスション”


今回のリクエストだけは知っていた。

どんな春が来るのか私もワクワクしていた。



まだこの時は、私の春が来ることを願っていたから。
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