#青春リクエスション
「じゃあ引き続き明日の準備よろしく!」
まだ終わってない椅子並べを再び始める。まだ半分も終わってない、スピード上げなきゃ間に合わないんじゃないかと思った。
「先に全部椅子出しちゃおうか?それで並べていこう」
椅子並べに加わった暁先輩が指揮を取った。
こーゆうとこからリーダーの素質ってやつが出るんだ、なるほど…!
「まずは一番奥の、あっちね!あの辺にテキトーに持ってて、あとから並べたらいいから置くだけ置いといて!」
「わっかりましたー!」
「あ、でもそこには置かないでね!ピアノを置くことになってるから!」
ピアノ…、吹奏楽部が部活紹介で使うのかな?
吹奏楽は華があっていいよね、新入生歓迎の部活紹介は存続に部費にもろもろ関わる大事なあれだもんね。
まだまだ力あり余ってそうな凛空ちゃんは軽々と4つのパイプ椅子を持って運んで行った。私も自分の仕事ぐらいはしなきゃと椅子を持った。
「由夢ちゃんはそこに置いてくれたらいいよ」
一番近いとこに置いてと、暁先輩が指さした。
「重いでしょ?向こうのは俺が持っていくから」
………。
ああぁぁ、やめて。
ときめいちゃう。
そんな優しい声で言わないで、好きが加速しちゃう。
「わかりました、運びますっ」
しゃんっと気持ちを引き締め、近いからせめて少しでも多く運ぼうと3つ椅子を持った。
でもやっぱり重くて1つ暁先輩に持ってもらうことになってしまった。
基本使い物にならないのでは?私…。
「由夢ちゃん、ありがとうね」
「いや、お礼を言うのは私です。すみません…、欲張ってしまったばっかりに」
「ううん、青春リクエスション…こんなに大きくなったのは由夢ちゃんのおかげだよ」
暁先輩と目が合った。
麗しく穏やかな瞳。
「あの時リクエストをくれてありがとう」
“好きな人とデートがしたい”
思えばあれが始まりだった。
なんであんなこと呟いちゃったのかなって、何度も思ったけどもしかしてそれも必然だったのかもしれない。
「“好きな人”とはデート出来た?」
「………。」
たまに開いたドアから風が吹いてくる。
春の風ってどうしてこう冷たいんだろう。
腕まくりした腕にひやっと当たるのが嫌に気になった。
「…っ」
「由夢ちゃん?」
センチメンタルな気分で勢いだったのかもしれないけど、気付けば指先から流れていたあれは消えない私の気持ち。
消えずに残っている。
私がデートしたいのは暁先輩です。
あの時から今もずっと私、暁先輩のことが…
「あの…っ」
「何?」
何から言えばいいのかな、何を言えばいいのかな。
手に持ったパイプ椅子を静かに置いた。
「暁先輩と花絵先輩って…、幼なじみなんですよね?」
「うん、まぁ…小学校からの付き合いだからね」
私が話しかけてしまったから暁先輩も足を止めた。
「仲、…いいですよね」
「そう?花絵ちゃん超ドライじゃない?まぁそんなとこが花絵ちゃんらしいんだけどね~」
へらっと笑って、どこか照れくさそうにした。
あの日、バレンタインの日。
暁先輩の見せた表情は…
「暁先輩はなんで青春リクエスションを始めたんですか?」
「それ前にも聞かなかった?笑顔が見たいからだよ」
暁先輩が歩き出す。
一度止めた足を、もう一度…
私に背を向けて。
「それって…、“誰の笑顔”が見たいんですか?」
「……っ」
ピクッと震えるように止まった暁先輩の背中、振り返らないでと願った。
こんな醜い顔、見られたくない。
「会長!椅子って全部出しちゃっていいんですか?」
「あっ、あ~、全部だと多いかな。1/3ぐらい出したら並べて、足りない分出していこうか」
「はぁーいっ」
凛空ちゃんの声で空気が戻る。
どうしよう、聞きたいのに聞きたくない。
聞けない、聞きたくない…。
「あ、花絵ちゃん!危ないっ」
ガタンっと音がした、ステージに設置された階段を花絵先輩が上ろうとして足を滑らせたから。
すぐに持っていたパイプ椅子を離して暁先輩が駆け寄った。
無造作に置かれた椅子からガシャーンっと床中に響いた。
その音にビックリしてみんな注目した。
「大丈夫!?」
花絵先輩の体を支えるように抱えていた。
「…ありがと」
「横断幕重いから、俺がやるからいいよ」
だって聞いたら確信に変わってしまうから。
暁先輩は花絵先輩が好き。
まだ終わってない椅子並べを再び始める。まだ半分も終わってない、スピード上げなきゃ間に合わないんじゃないかと思った。
「先に全部椅子出しちゃおうか?それで並べていこう」
椅子並べに加わった暁先輩が指揮を取った。
こーゆうとこからリーダーの素質ってやつが出るんだ、なるほど…!
「まずは一番奥の、あっちね!あの辺にテキトーに持ってて、あとから並べたらいいから置くだけ置いといて!」
「わっかりましたー!」
「あ、でもそこには置かないでね!ピアノを置くことになってるから!」
ピアノ…、吹奏楽部が部活紹介で使うのかな?
吹奏楽は華があっていいよね、新入生歓迎の部活紹介は存続に部費にもろもろ関わる大事なあれだもんね。
まだまだ力あり余ってそうな凛空ちゃんは軽々と4つのパイプ椅子を持って運んで行った。私も自分の仕事ぐらいはしなきゃと椅子を持った。
「由夢ちゃんはそこに置いてくれたらいいよ」
一番近いとこに置いてと、暁先輩が指さした。
「重いでしょ?向こうのは俺が持っていくから」
………。
ああぁぁ、やめて。
ときめいちゃう。
そんな優しい声で言わないで、好きが加速しちゃう。
「わかりました、運びますっ」
しゃんっと気持ちを引き締め、近いからせめて少しでも多く運ぼうと3つ椅子を持った。
でもやっぱり重くて1つ暁先輩に持ってもらうことになってしまった。
基本使い物にならないのでは?私…。
「由夢ちゃん、ありがとうね」
「いや、お礼を言うのは私です。すみません…、欲張ってしまったばっかりに」
「ううん、青春リクエスション…こんなに大きくなったのは由夢ちゃんのおかげだよ」
暁先輩と目が合った。
麗しく穏やかな瞳。
「あの時リクエストをくれてありがとう」
“好きな人とデートがしたい”
思えばあれが始まりだった。
なんであんなこと呟いちゃったのかなって、何度も思ったけどもしかしてそれも必然だったのかもしれない。
「“好きな人”とはデート出来た?」
「………。」
たまに開いたドアから風が吹いてくる。
春の風ってどうしてこう冷たいんだろう。
腕まくりした腕にひやっと当たるのが嫌に気になった。
「…っ」
「由夢ちゃん?」
センチメンタルな気分で勢いだったのかもしれないけど、気付けば指先から流れていたあれは消えない私の気持ち。
消えずに残っている。
私がデートしたいのは暁先輩です。
あの時から今もずっと私、暁先輩のことが…
「あの…っ」
「何?」
何から言えばいいのかな、何を言えばいいのかな。
手に持ったパイプ椅子を静かに置いた。
「暁先輩と花絵先輩って…、幼なじみなんですよね?」
「うん、まぁ…小学校からの付き合いだからね」
私が話しかけてしまったから暁先輩も足を止めた。
「仲、…いいですよね」
「そう?花絵ちゃん超ドライじゃない?まぁそんなとこが花絵ちゃんらしいんだけどね~」
へらっと笑って、どこか照れくさそうにした。
あの日、バレンタインの日。
暁先輩の見せた表情は…
「暁先輩はなんで青春リクエスションを始めたんですか?」
「それ前にも聞かなかった?笑顔が見たいからだよ」
暁先輩が歩き出す。
一度止めた足を、もう一度…
私に背を向けて。
「それって…、“誰の笑顔”が見たいんですか?」
「……っ」
ピクッと震えるように止まった暁先輩の背中、振り返らないでと願った。
こんな醜い顔、見られたくない。
「会長!椅子って全部出しちゃっていいんですか?」
「あっ、あ~、全部だと多いかな。1/3ぐらい出したら並べて、足りない分出していこうか」
「はぁーいっ」
凛空ちゃんの声で空気が戻る。
どうしよう、聞きたいのに聞きたくない。
聞けない、聞きたくない…。
「あ、花絵ちゃん!危ないっ」
ガタンっと音がした、ステージに設置された階段を花絵先輩が上ろうとして足を滑らせたから。
すぐに持っていたパイプ椅子を離して暁先輩が駆け寄った。
無造作に置かれた椅子からガシャーンっと床中に響いた。
その音にビックリしてみんな注目した。
「大丈夫!?」
花絵先輩の体を支えるように抱えていた。
「…ありがと」
「横断幕重いから、俺がやるからいいよ」
だって聞いたら確信に変わってしまうから。
暁先輩は花絵先輩が好き。