#青春リクエスション
少しでも、少しでもいいから、私のこと見てほしかった。

初めてデートした日、あれが本当のデートだったらよかったのにって今でも思い出してる。

あの時からこの気持ちは変わりません。



「あの…っ、付き合ってもらえませんか?」

「………。」

「少しでいいんで!ちょっとだけでも!」

「いいよ、どこに付き合えばいい?」

「…図書室に本を借りに行きたいんです!」



私が久しぶりにセンチメンタル気取ってる間に、新しいことが始まっていた。



「わかった、図書室まで行こうか」

「…はいっ!」

にこりと暁先輩が微笑めば、隣で女の子は喜んで。仲睦まじく図書室まで向かっちゃたりして。朗らかな空気がふわっと2人を包んでる。


………。

いや、なんだコレ?

何が起きてるの!!?

「“レンタル暁会長”だってさ」

授業後、ホームルーム前の掃除の時間。
玄関前の花壇の草取りをしながら凛空ちゃんが教えてくれた。

「レンタル暁会長…?」

「うん、青リクに来た“会長と付き合いたい”ってリクエストに必殺自作自演で“告白してみれば?”って返したんだって。青リク公式のアカウント使って」

抜いた草をポンポンと詰んでいく凛空ちゃんの話を聞きながら、玄関をほうきで掃いていた。

「そしたら本当に告白して来た子がいて、それに対して会長が…どこに行くの?何すればいいの?何に付き合えばいいの?ってわざと気付いてないフリして答えたら女子たちの間で“暁会長は実は超鈍感なんじゃないか説”が流れて今に至る、みたいな」

「…すごい発展ぶりじゃない?」

「今や大流行りだよ」

きっと本気で付き合いたいわけじゃないけれど、カッコいいしちょっと話してみたいって思ってた子たちにちょうどよかったんだ。需要と供給みたいな、ちょっと暇潰せればいいみたいな。それはそれで青リクっぽいと言えばぽい。

「マジで会長の考えることはわかんねぇよ」

詰まれた草をゴミ袋に入れる。私も同じように溜まった、青葉やら木の枝やらをゴミ袋に詰めた。

「会長って、よっぽど学校が好きなんだな」

「え?」

「好きじゃなきゃこんなめんどくさ…壮大なことできねぇよ」

「…うん」

そうなんだけど、暁先輩のそーゆうとこが好きだったんだけど。

何でも全力で、いつでも前向きで、みんなを笑顔にしてくれる。

「あれってやっぱやっぱ暁会長だから出来るんだよな。一緒にやってきて今すげぇそれ感じてる」


でもそれは全部花絵先輩のため。


そう思ったら、どうしても私には…
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