【電子書籍化】内緒で出産したら、俺様御曹司と結婚することになりました。


途方に暮れていた私は、どうしようかと視線を上げた時、前から歩いてきた人から目を離せなくなった。


――どうしてここにいるの?


そんな言葉が頭の中を支配する。


日本から遠く離れたニューヨークで会うとは思わなかった。


だけど私は、彼と話したことがない。

助けを求めたいけれど、そんなことできるはずがない。


なのに――、ふっと視線が合った気がした。


彼の口元が緩んで、私の前に立ち止まる。


そして英語が飛び交うこの国で、私に向かって日本語で言った。



「ひとりで突っ立って何してるんだ?」



その少しぶっきらぼうな口調は、昔と全く変わっていない。


口調も、仕草も、声のトーンも……。

私の知っている彼のままだ。


全てあの頃と一緒――。



「……迷子です」



きっと彼は私のことを知らないだろう。

私が一方的に知っているだけなのだ。


私が高校時代に一方的に好きだった、片想いの相手なのだから。


水野 晃輝(みずの こうき)それが彼の名前だ。

< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop