【電子書籍化】内緒で出産したら、俺様御曹司と結婚することになりました。
彼の声で初めて名前を呼ばれたことにドキッとしてしまう。
もうとっくの昔に心の奥にしまったはずの初恋なのに、私の心臓は鳴り止まない。
緊張のせいで何も話すことができずに、私はキャリーケースを引いてただ晃輝のあとをついて行くだけだった。
「ついたぞ、ここだ。チェックインは1人でできるな?」
そう言って立ち去ろうとした晃輝を、私は咄嗟に呼び止める。
ここでこのまま別れたら絶対に後悔する。
もう会うことは無いかもしれない。
憧れで終わらせたくはないこの気持ちの蓋を開けてしまったのだから……後悔はしたくない。
だから私は、ホテルには入らずに晃輝の服の裾を引っ張り引き止めた。
「あ、あの!お礼に夜ご飯ご馳走させてください!」
晃輝は一瞬ぽかんとした後、ふっと表情を緩めた。
「いいのか?」
それは了承したととってもいいのだろう。
私はコクコクと頷き、晃輝を見る。
「じゃあ、近くに美味しい店がある。そこに行こう」