【電子書籍化】内緒で出産したら、俺様御曹司と結婚することになりました。
断り文句も言わず、当たり前のようにそう言った。
私は晃輝とまだ一緒にいられることが嬉しくなる。
わかりやすく笑顔になってしまうのを止められないまま、私たちは来た道を少し引き返して、晃輝のおすすめのお店に向かった。
「ここは……?」
「個人店だが、安くて美味いものが食べられる。酒も色々揃っているぞ」
慣れたように入る晃輝は、このお店の常連なのかもしれない。
少し暗めの店内は落ち着いた雰囲気で、とても過ごしやすそうなところだった。
案内された席に座り、食べ物とお酒を適当に注文する。
「あの……さっきは本当にありがとうございました」
「別にいい……」
ぶっきらぼうにそう言われたけれど、少し背けられた横顔から、照れているだけだということが分かる。
伊達に、初恋の片想いを拗らせていたわけではない。
学生生活が被ったのは一年だけだったけれど、その中でたくさん観察してきたのだ。忘れられるはずがない。