夕立のあとには……
ふぅ……
小さく息をついた私は、パタンと学級日誌を閉じた。
日直は2人いる。
私と野村さんって女の子。
でも、実際に日直をやってるのは私だけ。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
◇
私には幼馴染みがいる。
倉持 飛鳥17歳。
家が近所で、生まれたのも10日違い。
母たちは、私たちが生まれて間もなくの頃からお互いの家を行き来してた。
私たちが仲良く遊んでるのを横目に、お茶して、おしゃべりして、子育ての悩みを相談してた。
私たちは、当然のように同じ幼稚園に通い、同じ小学校に通い、現在、高校2年生に至るまで、ずっと一緒に過ごしてきた。
変わり始めたのは、中学生の頃。
小さい頃から、私より可愛かった飛鳥は、名前の響きもあって、いつも女の子と間違われてた。
それが、中学生になり、背が伸び始めると同時に、綺麗に整った顔立ちに、どこか男らしさも加わり、一部の女子からキャーキャーと騒がれるようになった。
でも、飛鳥はやっぱり飛鳥のままで、誰から告白されても付き合うことはなかった。
そんな中学3年のある日。
「ああ、もう無理だ! 全然、分かんねぇ!」
期末テストまで1週間を切ったある日、飛鳥は、教室の左前方にある自分の席に座ったまま、英語の教科書で顔を覆い、音を上げた。
そして、くるっと振り返り、教室の右後ろの方に座る私に向かって大声で叫ぶ。
「なぁ、日和! 今日、お前んち行っていい? 英語、教えて!」
教室の反対の角まで届くような声で叫べない私は、ただ無言で頷いた。
それからだった。
周りの態度が変わったのは。
初めは、飛鳥への橋渡しを頼まれることが多かった。
飛鳥と出かけたいから、予定を聞いて欲しいとか、飛鳥に好きな人はいるのか聞いてきて欲しいとか。
でも、飛鳥は、私がそんな橋渡しをすると、決まって機嫌が悪くなる。
「そんなに知りたかったら、自分で聞きに来いって言っといて」
私の橋渡しに、全く効果がないと分かると、今度はいじめに変わった。
初めは陰口だった。
「ただの幼馴染みのくせに、彼女ヅラしてんじゃねぇよ」
すれ違いざまに、ボソッとそんなことを呟かれる。
私は別に彼女ヅラなんてしてないのに。
けれど、別に無視されても悪態をつかれても、もうすぐ卒業。
休み時間も受験勉強してれば、友達がいなくてもいい。
それに、彼女たちは、飛鳥がいるところでは、決していじめてこない。
随分、打算的ないじめだなとは思うけど、私は全く気にしないことにした。
小さく息をついた私は、パタンと学級日誌を閉じた。
日直は2人いる。
私と野村さんって女の子。
でも、実際に日直をやってるのは私だけ。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
◇
私には幼馴染みがいる。
倉持 飛鳥17歳。
家が近所で、生まれたのも10日違い。
母たちは、私たちが生まれて間もなくの頃からお互いの家を行き来してた。
私たちが仲良く遊んでるのを横目に、お茶して、おしゃべりして、子育ての悩みを相談してた。
私たちは、当然のように同じ幼稚園に通い、同じ小学校に通い、現在、高校2年生に至るまで、ずっと一緒に過ごしてきた。
変わり始めたのは、中学生の頃。
小さい頃から、私より可愛かった飛鳥は、名前の響きもあって、いつも女の子と間違われてた。
それが、中学生になり、背が伸び始めると同時に、綺麗に整った顔立ちに、どこか男らしさも加わり、一部の女子からキャーキャーと騒がれるようになった。
でも、飛鳥はやっぱり飛鳥のままで、誰から告白されても付き合うことはなかった。
そんな中学3年のある日。
「ああ、もう無理だ! 全然、分かんねぇ!」
期末テストまで1週間を切ったある日、飛鳥は、教室の左前方にある自分の席に座ったまま、英語の教科書で顔を覆い、音を上げた。
そして、くるっと振り返り、教室の右後ろの方に座る私に向かって大声で叫ぶ。
「なぁ、日和! 今日、お前んち行っていい? 英語、教えて!」
教室の反対の角まで届くような声で叫べない私は、ただ無言で頷いた。
それからだった。
周りの態度が変わったのは。
初めは、飛鳥への橋渡しを頼まれることが多かった。
飛鳥と出かけたいから、予定を聞いて欲しいとか、飛鳥に好きな人はいるのか聞いてきて欲しいとか。
でも、飛鳥は、私がそんな橋渡しをすると、決まって機嫌が悪くなる。
「そんなに知りたかったら、自分で聞きに来いって言っといて」
私の橋渡しに、全く効果がないと分かると、今度はいじめに変わった。
初めは陰口だった。
「ただの幼馴染みのくせに、彼女ヅラしてんじゃねぇよ」
すれ違いざまに、ボソッとそんなことを呟かれる。
私は別に彼女ヅラなんてしてないのに。
けれど、別に無視されても悪態をつかれても、もうすぐ卒業。
休み時間も受験勉強してれば、友達がいなくてもいい。
それに、彼女たちは、飛鳥がいるところでは、決していじめてこない。
随分、打算的ないじめだなとは思うけど、私は全く気にしないことにした。