大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「健二から私のこと頼まれてたの、忘れてたでしょ?」

 言ってくすくす笑った佳穂に、修太郎(しゅうたろう)は何も言い返すことができなかった。

「まぁ私、ご覧の通り誰かに守ってもらわなきゃいけないようなか弱い女じゃないから……そこは気にしないで?」

 そう言われはしたけれど。

「――忘れててすまない。で、体調の方は問題ないのか?」

 と聞かずにはいられない。

 確か佳穂は今、妊娠初期のはずだ。
 2ヶ月ぐらいだったと記憶しているが、何があるか分からない時期でもあるし、健二も心配していたのだ。

「ん〜? 平気よ? 幸い私、つわりも全然ないし。本当にお腹に赤ちゃんいるの?ってくらい何にも変化なしで逆に怖いくらい」

 今、修太郎の前に座った佳穂が飲んでいるコーヒーは、カフェインレスの無糖ミルクコーヒーだ。

 最近のデカフェは普通のコーヒーと遜色ないくらい美味しいらしいが、お酒が好きな佳穂にとっては、飲酒を我慢しないといけない方が辛いとか何とか。
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