大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「あ、あのっ、でも、でもっ」

 それでも尚、オロオロする日織(ひおり)に、十升(みつたか)が「年寄りの厚意は黙って受け取っといてやれ。断ったら悲しむぞ」と口を挟んで、善蔵(ぜんぞう)から「誰が年寄りだ!」と叱られていた。

 一斗(いっと)はそんな三人の様子を穏やかな笑みを浮かべて遠巻きにしていて。

 実は一斗には一事が万事、こんな風に一歩引いたところから物事を観察するようなきらいが昔からあったのだが、日織に対しては割と積極的に口出しすることが多かったため、誰も気付いていなかった。
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