大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
なのに、あえて子供の頃のように旧姓で呼びかけられたことに何となく落ち着かないものを感じてしまった。
いや、幼い頃から見知った者同士ともなれば、そちらが「慣れ」という観点からは普通なのは分かっているつもりだ。
でも、日織には元々同級生にそんなに親しい友達なんていなかったし、それはやたらと絡んできていた眼前の男に対しても同様なわけで。
日織が、クラスメイトから「藤原さん」と呼び掛けられることがあるとすれば、係の用事なんかがあるときぐらいだった。
放課後一緒に帰ろうとか、ましてや遊びに行こうとか、そういう私的なことで名前を呼ばれたこと自体が皆無だったし、羽住十升という男子にしても名前を呼ばれるよりも「お前」呼ばわりされる方が圧倒的に多かったと記憶している。
ならば今更旧姓の「藤原」にこだわらなくとも、「塚田」で呼んでくれたらいいのではないかと思ったりして。
(――あ、やっぱり違いますっ)
いや、幼い頃から見知った者同士ともなれば、そちらが「慣れ」という観点からは普通なのは分かっているつもりだ。
でも、日織には元々同級生にそんなに親しい友達なんていなかったし、それはやたらと絡んできていた眼前の男に対しても同様なわけで。
日織が、クラスメイトから「藤原さん」と呼び掛けられることがあるとすれば、係の用事なんかがあるときぐらいだった。
放課後一緒に帰ろうとか、ましてや遊びに行こうとか、そういう私的なことで名前を呼ばれたこと自体が皆無だったし、羽住十升という男子にしても名前を呼ばれるよりも「お前」呼ばわりされる方が圧倒的に多かったと記憶している。
ならば今更旧姓の「藤原」にこだわらなくとも、「塚田」で呼んでくれたらいいのではないかと思ったりして。
(――あ、やっぱり違いますっ)