大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「……修太郎さんのおっしゃる通りなのです。私、本当にお馬鹿さんだったなって……。羽住くんたちを見ていて思ったのです」
(ああ、本当! 運転中でなければ、今すぐにでも抱きしめて差し上げるのに!)
そう思って、自然ハンドルを握る手に力がこもってしまった修太郎をよそに、日織が太ももの上で指先をモジモジと遊ばせながら続ける。
「あの……、修太郎さんは……うちの父が何の会社を経営しているのかご存知でいらっしゃいますか?」
その口ぶりから察するに、日織は本当に何も知らないらしい。
修太郎も詳しいわけではないが、藤原日之進が何を商って、修太郎の愛する日織を育て上げたのかくらいは承知しているつもりだ。
日之進たちだって、別に努めて家業のことを日織に隠しているわけではないだろう。
だが彼女の両親が、一粒種の日織を蝶よ花よと箱入り娘同然に可愛がってきたことはよく知っている修太郎だ。
きっと、日織に家業を継がせないといけないとかそういう思いが彼らになかったから、言う機会に恵まれずにきただけだと思う。
もっと言えば、修太郎の腹違いの弟・健二がまだ日織の許嫁だった頃、修太郎と日織をくっ付けるべく暗躍することがなければ、日織自身だってきっと、今でも未だに自分でお金を稼ぐということが何たるかも分からない女の子のままだったはずで。
そんな日織が、親の仕事に興味を持たずにここまで過ごしてきたとしても、何ら不思議ではなかったな、と今更のように気付かされた修太郎だ。
(ああ、本当! 運転中でなければ、今すぐにでも抱きしめて差し上げるのに!)
そう思って、自然ハンドルを握る手に力がこもってしまった修太郎をよそに、日織が太ももの上で指先をモジモジと遊ばせながら続ける。
「あの……、修太郎さんは……うちの父が何の会社を経営しているのかご存知でいらっしゃいますか?」
その口ぶりから察するに、日織は本当に何も知らないらしい。
修太郎も詳しいわけではないが、藤原日之進が何を商って、修太郎の愛する日織を育て上げたのかくらいは承知しているつもりだ。
日之進たちだって、別に努めて家業のことを日織に隠しているわけではないだろう。
だが彼女の両親が、一粒種の日織を蝶よ花よと箱入り娘同然に可愛がってきたことはよく知っている修太郎だ。
きっと、日織に家業を継がせないといけないとかそういう思いが彼らになかったから、言う機会に恵まれずにきただけだと思う。
もっと言えば、修太郎の腹違いの弟・健二がまだ日織の許嫁だった頃、修太郎と日織をくっ付けるべく暗躍することがなければ、日織自身だってきっと、今でも未だに自分でお金を稼ぐということが何たるかも分からない女の子のままだったはずで。
そんな日織が、親の仕事に興味を持たずにここまで過ごしてきたとしても、何ら不思議ではなかったな、と今更のように気付かされた修太郎だ。