大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
***
「それでね、一斗さんが……」
「――一斗さん?」
「あ。羽住くんのお兄さんのお名前なのですっ。……その彼が和装でいらしたんですけど――」
そこで、同じ枕に頭を乗せた、すぐ横の修太郎を至近距離で見詰めてくると、
「私、彼のお着物がすっごくすっごく修太郎さんに似合いそうな気がして……思わず見惚れてしまったのですっ」
無意識だろうか。
言い終わるか終わらないかのタイミングで、小さな手が布団の中から伸びてきて、頬に沿わせるように修太郎の輪郭をやんわりと撫でてくる。
そのせいで、日織が見知らぬ男の名を呼んだことを問いただす機会を逸してしまった修太郎だ。
「あの、日織さんさっきの――」
それでも何とか言い募ろうとしたら、今度はシーッと言いながら修太郎の唇に触れてきた日織に、チュッと触れるか触れないかの軽いキスを落とされた。
「私、結婚式での修太郎さんの紋付羽織袴姿、物凄く楽しみなのですっ」
日織〝から〟の貴重なキスの直後、そんな風にはにかむように微笑まれては、よく知りもしない男の名などどうでも良くなってしまった修太郎だ。
「それでね、一斗さんが……」
「――一斗さん?」
「あ。羽住くんのお兄さんのお名前なのですっ。……その彼が和装でいらしたんですけど――」
そこで、同じ枕に頭を乗せた、すぐ横の修太郎を至近距離で見詰めてくると、
「私、彼のお着物がすっごくすっごく修太郎さんに似合いそうな気がして……思わず見惚れてしまったのですっ」
無意識だろうか。
言い終わるか終わらないかのタイミングで、小さな手が布団の中から伸びてきて、頬に沿わせるように修太郎の輪郭をやんわりと撫でてくる。
そのせいで、日織が見知らぬ男の名を呼んだことを問いただす機会を逸してしまった修太郎だ。
「あの、日織さんさっきの――」
それでも何とか言い募ろうとしたら、今度はシーッと言いながら修太郎の唇に触れてきた日織に、チュッと触れるか触れないかの軽いキスを落とされた。
「私、結婚式での修太郎さんの紋付羽織袴姿、物凄く楽しみなのですっ」
日織〝から〟の貴重なキスの直後、そんな風にはにかむように微笑まれては、よく知りもしない男の名などどうでも良くなってしまった修太郎だ。