大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
13.好きなものを好きだと思うのは悪いことなの?
 研修初日は善蔵(ぜんぞう)羽住(はすみ)酒造の中を案内してもらったり、羽住酒造で造られるお酒のことを色々聞かされたりでほとんどの時間が過ぎてしまった。

 中でも特に時間を掛けて見せてもらったのが蔵の中で。


 日織(ひおり)は善蔵とともに白の長袖・長ズボンに衛生キャップ(白のぼうし)姿に着替えて、蔵の中に入らせてもらった。

 その間、販売所の方を切り盛りしていたのは一斗(いっと)で。
 日織も、二日目からは酒まつりでの売り子の予行練習としてそちらが主な研修先になるのだと聞かされて、足手まといにならないよう頑張らなきゃ!と、涼しい顔で自分達を見送る一斗を、ソワソワとした気持ちで見つめた。


***

 蔵の方では日織たち同様、白一色の服装に身を包んだ十升(みつたか)が、杜氏(とうじ)である能見(のうみ)の指導のもと、真剣な眼差しで蒸し上がったばかりの大量の米と向き合っている真っ最中で。

 離れた場所からでも蒸し立ての米から上がる熱気が伝わってくるなか、額に汗を浮かべた十升(みつたか)が、真剣な表情で熱々の米を手に取って押しつぶしたりしながら、ためつすがめつしているのが見えた。


< 143 / 253 >

この作品をシェア

pagetop