大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「じゃあそれ、とりあえず利き酒してみてよ」

 言いながら、「だからこそ僕は昔から日織(ひおり)ちゃんのこと、〝格別に気に入ってたりする〟んだよね」と思った一斗(いっと)だ。

 しかし一斗がどんなに粉をかけてみたところで、日織本人がこの調子では、かけた粉は払い落とされ続けるんだろうな、とも分かるから我知らず吐息が漏れてしまう。


「ねぇ日織ちゃん。キミの修太郎(しゅうたろう)さんは……日織ちゃんのハートをどうやって射止めたの?」

 この、ニュルニュルと掴みどころのない鰻みたいな女の子を、「私は人妻なのですっ!」と自覚させることが出来る男というのは、一体どんな人間なんだろう?と気になってしまった。

「修太郎さんはとってもとっても一途なかたなのですっ。私、彼のそう言うところが大好きなのですっ。――それにっ」

 そこでポッと赤くなると「物凄くハンサムさんなのですっ。私、大人になって修太郎さんと再会して……あまりの格好良さに気が付いたら大好きになってしまっていたのですっ」と「キャーキャー」言いながらモジモジする。

(わー、日織ちゃん、めっちゃ女の顔になってるじゃん)

 頬に手を当てて照れ臭そうにウニャウニャする日織を見て、一斗は何だかこっちまであてられてしまいそうだと思ってしまった。
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