大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
修太郎としては首筋のラインが見え過ぎることが非常に気に入らない。
正直、誰にも見せたくないとすら思っている。
「食べ物を扱うんですもの。髪の毛を下ろしていたらダメだと思うのですっ」
だけど、日織は日織なりにポリシーを持って、その髪型にしているらしい。
返されたセリフが余りにも正論で、修太郎はグッと言葉に詰まってしまった。
「じゃ、じゃあ。――そうだ! お家からスカーフをお持ちしましょうか?」
マンションに戻る折に日織の実家に立ち寄って義母織子に相談すれば、きっとスカーフの一枚や二枚、すぐに出してくれるはず。
「……修太郎さん」
だが、そんな修太郎の提案に、日織は小さく吐息を落とすと、静かに夫の名前を呼んで、じっと顔を見つめてきた。
「私、先程も申し上げましたよ?」
色素の薄いブラウンアイに見据えられて、修太郎はまるで蛇に睨まれた蛙みたいに身動きが取れなくなる。
「少し落ち着いてください。私、子供じゃないのです。そんなに心配なさらなくても大丈夫ですから」
そこで日織はドアハンドルから手を離すと、修太郎の方へ身体を寄せてきた。
正直、誰にも見せたくないとすら思っている。
「食べ物を扱うんですもの。髪の毛を下ろしていたらダメだと思うのですっ」
だけど、日織は日織なりにポリシーを持って、その髪型にしているらしい。
返されたセリフが余りにも正論で、修太郎はグッと言葉に詰まってしまった。
「じゃ、じゃあ。――そうだ! お家からスカーフをお持ちしましょうか?」
マンションに戻る折に日織の実家に立ち寄って義母織子に相談すれば、きっとスカーフの一枚や二枚、すぐに出してくれるはず。
「……修太郎さん」
だが、そんな修太郎の提案に、日織は小さく吐息を落とすと、静かに夫の名前を呼んで、じっと顔を見つめてきた。
「私、先程も申し上げましたよ?」
色素の薄いブラウンアイに見据えられて、修太郎はまるで蛇に睨まれた蛙みたいに身動きが取れなくなる。
「少し落ち着いてください。私、子供じゃないのです。そんなに心配なさらなくても大丈夫ですから」
そこで日織はドアハンドルから手を離すと、修太郎の方へ身体を寄せてきた。