大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 あの夜。
 性に対する知識が微妙にズレていた可愛い日織(ひおり)が、ぎこちなくではあったけれど修太郎(しゅうたろう)の求めに応じて〝あそこまで〟してくれたのだ。

 間違いなく愛されていると信じてはいるけれど、その実感とは別のところで修太郎は隙あらばずっと日織のそばにいたいし、彼女をいつまででも見ていたいと思っている。

 その機会に恵まれていると言うのに、こんな風に自ら日織のそばを離れるのは何だかとてももったいない気がして仕方がないのだ。

 ないのだけれど――。

 こうやって少しずつリハビリをしておかないと、日織に呆れられてサヨナラされてしまいそうで怖かったりもして。

 朝、色々心配しすぎて日織から叱られたのを、修太郎は苦々しく思い出している真っ最中だ。

 ならばいっそ。

(せっかくですし、日織さんのためにあれこれ酒を見繕って来ようかな)

 その方が日織に喜ばれて株を上げられる気がする。

 市内に点在しているたくさんの酒蔵が、こんな風に一堂に会する機会なんて滅多にないのだし。

 修太郎と日織が住んでいるこの街も、市町村合併したお陰で物凄く広くなった。

 奥の方にある町村なんかは、市の中心部から車で一時間以上掛かったりするのだ。
< 201 / 253 >

この作品をシェア

pagetop