大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
(奥の方の酒造メーカーも来てるだろうか)

 いわゆる市町村合併で我が自治体に組み込まれた新・市内の酒蔵が狙い目だと思った修太郎だ。

 旧・市内にある酒蔵の酒ならば、羽住(はすみ)酒造のように、蔵元にも比較的足が運びやすいが、前者はそうはいかない。

 加えて小さな蔵本だったりすると、卸先(おろしさき)自体限られていたりして、行きつけの店や、ましてやスーパーなどでは見かけない酒なんかも結構あるのだ。

 そういうのを見つけて買っておいたら、きっと日織(ひおり)は喜んでくれるだろう。

(あ、でも、待てよ?)

 もしかすると近隣の酒蔵も、普段は酒店にあまり卸さないような限定品の酒をイベントだから、と特別に売っている可能性だってないとは言えないではないか。

 修太郎は少し考えて、出店しているブースを片っ端から覗いてみることにした。

 塚田(つかだ)修太郎という男、言うまでもなく大好きな妻・日織のためならば、どんな労力もいとわないのである。
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