大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 ベッドの中。
 生まれたままの姿の日織(ひおり)が、胸元を恥ずかしそうに片手で隠しながら、すぐそばに横たわる修太郎を見つめてくるのはなかなかに〝くる〟ものがあって。

 修太郎は今、眼鏡がベッドの宮棚に置かれていて本当に良かったと思っている。

 薄暗いのも相まって、日織の表情がクリアに見えないのもある意味有難い。

 でないともう一度、と迫って日織に無理をさせてしまいそうだった。

 それに何より――。

(もう避妊具(ゴム)がない……)

 六個入りが一箱あったから大丈夫だと思っていたのに、何だかんだで一晩で使い果たしてしまった。

 このところバタバタしていて、買い足しそびれていた結果、不覚にもストックを切らしてしまっていた。

 こんなこと、日織と付き合い始めて初めてのことだったから、自分が如何に彼女のバイトと結婚式準備のダブルパンチでダメージを受けてそわついていたのか分かる。

(実際羽住(はすみ)兄弟の存在も大きかったんですよね)

 苦々しくそんなことを思ったら、特に和装眼鏡の長兄の顔がチラついて、少しイラッとしてしまった。

(眼鏡もそろそろ買い替えないと……)

 デザイン的にも何だか向こうのほうが洗練されているように思えたし、何より結構長いこと使って来たので、修太郎の眼鏡はあちこちにガタが来ている。

 結婚式が終わって落ち着いたら、と思ってはいるのだけれど。
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