大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「えっ、あ、あのっ……、日織(ひおり)さん、それはどういう……?」

(これって日織さん、僕に眼鏡買ってくださろうとなさってますよね?)

 ここまでハッキリ〝お金のことは気にするな〟と言い切られてしまっては、看過できないと思ってしまった修太郎だ。

 そもそも修太郎の誕生日は十月七日で、今日は五月八日(日曜日)。

 全くもって何でもない日なわけで。

 寧ろ、六月二四日の日織の誕生日の方が近いくらいだ。


 先のホワイトデーには、修太郎は日織のイメージだと勝手に思っている、フレッシュピーチの香り漂うヘアオイルと、髪の毛に優しい(くし)のセットをお返しした。

 プレゼントして以来、日織はそれをお泊まりの度に持って来て使ってくれるから、修太郎はとても嬉しかったりするのだ。

 そう。
 自分にはそれだけでも十分なプレゼント(ごほうび)なのに。

 日織に何かを買ってもらうなんて有り得ないじゃないか。

 何もない日にプレゼントを渡そうとすると、恐縮して受け取ってくれない日織だから、修太郎だって先の酒蔵祭りで買った地酒たちは、日織の誕生日プレゼントにしようと隠しているのに。
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