大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 だけどお値段は、日織(ひおり)が想定していたものの半値ほどしかしなかったから。

「ほっ、本当にそれでよろしいのですか?」

(もっと高級なブランドの、斬新なデザインのものでも大丈夫ですよっ?)

 心の中でそっとそんな言葉を付け加えた日織だ。


 修太郎が選んだものだって、一応名だたるメーカーのお品らしいのだけど。



「眼鏡はね、高ければいいと言うわけではないんですよ、日織さん」

 修太郎が、まるで日織の心中を見透かしたみたいにそんなことを言うものだから、日織は思わず「なっ、んで分かっちゃったのですかっ?」と素直に暴露してしまって修太郎に笑われてしまう。

「分かりますよ。だって日織さん、ショーケースの中を覗き込まれる際、ずっと値札ばかり見ておられるんですから」

 クスッと笑われて、日織はにわかに恥ずかしくなる。

(お、お値段ばかりに囚われてるとかっ、何だかお金の亡者みたいで浅ましいのですっ)

 そう思ったから。
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