大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「私、自分からは死角になっていて見えないところの妊娠線も怖いのですっ」

 眉根を寄せて日織(ひおり)が言ったら「その辺りは僕が毎日しっかり目視しながらケアさせていただいているので大丈夫です」とやけに自信満々に言い切られてしまった。


 双子の妊娠が分かってからは、大事をとって夜の夫婦生活は、とんとご無沙汰になってしまっている二人だけれど、その分スキンシップは欠かさないよう心がけている。

 毎晩一緒にお風呂に入っているのだってその一環だ。

 お風呂上がりの妻のボディケアは、修太郎の日々の楽しみの一つになっている。


 出産予定日は一か月半後の八月下旬。

 晩夏に生まれてくる予定の男の子と女の子に、何だかんだ言いながらも日織と修太郎はワクワクさせられっぱなしなのだ。


「たくさん子供欲しいですねってお話しましたが、いきなり二人の父親になるのは想定外でした」

 修太郎が、立ち上がって自分を見上げてくる日織を、お腹を潰さないように気を付けながらそっと抱きしめてそうつぶやけば、日織が「本当に」と返してから「あっ」と何かを思い出したように小さく身体を撥ねさせて。
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