大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 羽住(はすみ)のスマートフォンの画面に「藤原(ふじわら)日織(ひおり)」の文字を見つけて、小さくうなずいてから、日織は「あっ!」と思う。

「私、もう藤原ではないのですっ。塚田(つかだ)日織なのですっ」

 言ったら、「塚田とか言われてもピンとこねぇんだよ。そっちで登録しちまったら、電話帳から呼び出すのに名前思い出せなくて苦労すんだろ」と眉根を寄せられる。

「……でもっ」

 それでも「藤原」と登録されてしまうと、修太郎とのご縁を否定されているみたいに思えて、日織は落ち着かないのだ。

「分かったよ。じゃ、これでいいだろ?」

 溜め息とともに差し出された画面には「日織」とだけ記されていて。

「下の名前は結婚しようがすまいが変わんねぇだろ? な? 日織!」

 とか。

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