大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。勝手に呼びかた変えないでくださいっ」

 言っても、聞く耳持たずと言った調子で、「藤原って呼ばれんのは嫌なんだろ? で、俺は塚田って呼びたくねぇ。だったら譲歩して日織って呼ぶしかねぇじゃねぇか」と、もっともらしく言われてしまう。

「でも、ダメなのですっ。私を下の名前で呼んでもいいのは修太郎さんとお父様とお母様と……幼馴染みのききちゃんと健二さんと……健二さんの許嫁(いいなずけ)佳穂(かほ)さんと……修太郎さんの妹さんたちとご両親と……それからそれから」


「ん? それって結構いるってことだろ? じゃ、問題ねぇじゃん」


 一生懸命言い募ったら逆にニヤリとされて、結局、羽住(はすみ)から「日織」と呼ばれることは決定事項になってしまった――。
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