大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 黒のテイラードジャケットに、同色のチノパン。中にグレイのVネックシャツを合わせたシックな装いの、黒縁眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気のその男は、自分たちより歳が大分上に見えた。

 だが、それが親父っぽいとか年寄りくさいとかそういう風に見えないばかりか、大人の男という色香をまとっていて、不覚にもかっこいいと思ってしまった羽住(はすみ)だ。

 背丈にしても、羽住(はすみ)自身それほど低身長ではないにも関わらず、この男よりは優に数センチは劣っていて。

 さっきまでは、女性の中でも小さめな部類に入る日織と並べば、自分だってお釣りが来るほどに身長差があると思えていたのに、眼前の男には到底敵わないと痛感させられた。


 それに――。
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