大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
自分といた時には1度も聞いたことのないような、どこか艶めいてすら感じられる甘い声音で男の名を呼ばわった日織に、羽住は思わず見惚れてしまった。
(こいつ、こんな女の顔が出来んのかよ)
同窓会中、ダメ元で何度か日織に揺さぶりを掛けるような言葉を投げかけてみた羽住だったけれど、困ったように眉根を寄せられたり、落ち着かない様子でソワソワと瞳を逸らされたことはあっても、ただの一瞬だってこんな顔はさせられなかったのだ。
それなのに――。
(マジで取り入る隙、ねぇじゃねぇか)
さっき日織からアレコレ聞いた感じで、入籍はしていてもそんなに夫婦仲は良くないのだと羽住は勝手に推測していた。
何だったら旦那に懸想しているのは日織だけで、男の方はそうでもないんだろうなとすら思っていたのだ。
羽住だって馬鹿じゃない。
人妻に手を出すようなハイリスクなことはしたくないし、粉をかけても頑なに旦那を想い、微塵もなびく素振りさえ見せなかった日織を、少し不憫にすら思いつつも応援したいとも思ったくらいだ。
(こいつ、こんな女の顔が出来んのかよ)
同窓会中、ダメ元で何度か日織に揺さぶりを掛けるような言葉を投げかけてみた羽住だったけれど、困ったように眉根を寄せられたり、落ち着かない様子でソワソワと瞳を逸らされたことはあっても、ただの一瞬だってこんな顔はさせられなかったのだ。
それなのに――。
(マジで取り入る隙、ねぇじゃねぇか)
さっき日織からアレコレ聞いた感じで、入籍はしていてもそんなに夫婦仲は良くないのだと羽住は勝手に推測していた。
何だったら旦那に懸想しているのは日織だけで、男の方はそうでもないんだろうなとすら思っていたのだ。
羽住だって馬鹿じゃない。
人妻に手を出すようなハイリスクなことはしたくないし、粉をかけても頑なに旦那を想い、微塵もなびく素振りさえ見せなかった日織を、少し不憫にすら思いつつも応援したいとも思ったくらいだ。