大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「ぁ、んっ。しゅ、たろぉさっ。まだお話……」

 〝の途中なのですっ〟という言葉は、最後まで言わせてもらえず修太郎(しゅうたろう)の唇に吸い込まれる。


「……はぁ、んっ、――しゅ、う……っ」


 キスの合間合間を縫うように、それでもその先を続けようとする日織(ひおり)のことを、ある意味すごいな、と感心しつつ。

 けれど修太郎は彼女に続きを言わせてやるつもりなんて毛頭なかった。

 同窓会なんかに行かせてしまったら、同年代の若い男と出会うことは必至で。

 修太郎は日織が同窓会に参加することを、笑顔で許してあげられる自信がないのだ。

 でも。


 それでもわざわざマンション(ここ)へ来る荷物の中にその葉書を忍ばせてきたということは、日織はどうしても同窓会(そこ)へ行きたいのだろう。

 修太郎にもそれが分かるから。だから今だけ。ほんの少しの間でいいから答えを保留にさせて?と卑怯なことを考えてしまう。


「バレンタインデー、今日が本番ですよね?」

 昨日は厳密にいうとまだ13日で。

 その段階で日織の荷物の中にそれ用のラッピングを見つけた修太郎は、「日付が変わってから」としぶる日織を説得して中を開けさせてもらったのだ。
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