大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「本当、すまなかったな? ――全部俺の勘違いだったみたいだわ」

 吐息混じりにそう言って頭を下げる羽住(はすみ)に、今まで黙って日織と羽住(はすみ)のやり取りを傍観していた修太郎が口を開いた。

「何を勘違いなさっていらしたのかは存じ上げませんが、うちの妻を困らせることだけは()()()()()()ないようにして頂きたい。――よろしいですね?」

 声音こそ本当に穏やかだけれど、その言葉には有無を言わせぬものがあって。

(そもそも「金輪際」も「2度と」も全否定に繋がる言葉だろ! それをわざと重複させて強調してくるとか……マジ()えーわ!)

 羽住(はすみ)は見えないナイフの切っ先で、首筋をツツツ……と撫でられたような錯覚を覚えた。

 ――もし再び同じことが起こるようなら容赦はしない。

 そう言外に含められているのは明白だったから。


「わ、かりました」

 自分でも情けないぐらい声が震えてしまったのを感じて、羽住(はすみ)はグッとこぶしを握って自分を懸命に保とうと努力した。
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