大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 言うなり、背後から耳朶に舌を這わせ、日織(ひおり)がくすぐったさに身体をすくませるのと同時、今まではあえて触れずに避けてきた胸の(いただき)を、指先で引っ掻くようにカリッと爪弾く。

「あ、んんっ……」

 途端日織の身体がビクッと跳ねて、束ねられた手の先、指先が快楽に(あえ)ぐように鏡面を叩いた。

「しゅ、たろ、さっ。私……そんなつもりは……、やあぁっ」

 日織が言い訳をしようとするのを邪魔するみたいに、修太郎(しゅうたろう)が固くしこった乳首をギュッとつまんだら、日織がたまらないみたいに腰を揺らせて。

「そんなつもりはないのに、僕に内緒で何の約束を取り付けていらしたんですか? 僕の奥さんはいつからそんな小悪魔になってしまったの?」

「約……束……?」

 情欲を必死に堪えているのが(うかが)える、上気した頬と、涙に潤んだ瞳。

 それを鏡越し、修太郎に向けると、日織が彼の言葉を途切れ途切れに復唱する。

 そんな日織に、わざとらしく大きな溜め息を落として見せると、修太郎は日織の胸のとんがりをつまんだまま、キュッと引っ張った。
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