大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 いつも情事の前には身体を清めたがる日織(ひおり)だ。
 情欲にまみれた〝したい〟気持ちと、理性との狭間(はざま)で揺れる、色素の薄いブラウンアイをわざと覗き込んで、修太郎(しゅうたろう)は日織の中に埋めた指を、クチュッという濡れた水音とともに、もう少しだけ奥へと進めた。

「や、――ぁっ」

 これで、劣情に飲まれてそのまま続行になるか、それとも理性が優って風呂を優先させるか。

 日織がどちらを選んでも、修太郎は濃厚な妻の香りを嗅ぎながら行為に及ぶことができるか、もしくは愛する女性と一緒に入浴して、その身体を隅々まで洗い清める権利を有するかの、二者択一になる。
 つまり、どちらに転んでも全くもって損にはならないのだ。

 だからこそ、おおらかな気持ちで日織に決めてもらおうと構える事ができる。


「しゅ、うたろぉさっ。私……もぅっ」

 言って、ギュッと自分にしがみついて頬を擦り寄せてきた日織に、修太郎は彼女が前者を選んだことを悟った。
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