大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
修太郎(しゅうたろう)さん、私……」

 と、泡飛ばしに少し飽きてきたらしい日織(ひおり)が、不意に修太郎を見上げてつぶやいた。

 決して扇状的なわけではないのに、色素の薄い大きな瞳に()びるように見上げられると、心臓が飛び跳ねてしまう修太郎だ。

「――?」

 それを悟られないよう気を付けながら、日織の言葉にほんの少しだけ首を傾げて先を促せば、日織は小さく深呼吸をしてから言った。


「――私、行きたいのですっ!」

 と。

 当然修太郎は「何処(どこ)に?」と問わずにはいられない。

 さすがに今の流れで「達し(イキ)たいのですっ!」ではないだろうと言うのは分かったけれど、ではそれ以外に何が?と考えると、修太郎には皆目見当もつかなくて。


「あっ、ごっ、ごめんなさい……。私、気持ちが先走り過ぎましたっ」

 修太郎の、疑問符満載の顔を見て、日織が申し訳なさそうにソワソワと瞳を揺らせる。
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