君との恋の物語-Red Pierce-
それからのこと
新居を決めてからの日々は飛ぶように過ぎていった。
引越しの準備をしつつ、出版社からの「契約社員」についての説明を受け、学校では基本的に図書館にいて資料を集める。
仕事はそのまま図書館でするか、自宅に戻って行う。
合間に授業に出る。
就職課への挨拶も終えて、引っ越しは今回は荷物が多いので業者を手配した。
費用は自分でもつつもりだったが、親父が出すと言って聞かなかった。
俺としては助かるので、そこは素直にお願いした。
後日母親に聞いた話だが、親父は、俺が在学中に就職を決めて独り立ちしたことをすごく喜んでいたんだそうだ。
そりゃもう、自分の職場で毎日自慢するくらいだったらしい。
が、同時に寂しいとも思っていたようだ。
だから、「できることはしてやりたい」と言って引越しの費用を出してくれたらしい。
だったらそう言えばいいじゃないかと母に言うと、
「お互い様でしょ」と言い返された。
まぁ、確かに。お互いにあんまり直接言わないからな。
今度、飲みにでも誘ってみるか…
引越しを終えて、本格的に新体制が定着する頃には、もう夏になっていた。
相変わらず仕事が忙しいので、大学が夏休みに入ると俺の生活も少しは楽になった。
なにせ、試験勉強が大変だった。
どうしても首席で卒業したい俺は、勉強にも余念がない。
大変だが、ここで首席卒業できなければこの大学を選んだ意味がない。
試験前はさぎりとの時間や、寝る時間を削って、しっかりと試験に備えた。
ふと、俺も変わったなと思う。
以前の俺は、こんなに必死に努力しなくても結果を残していた。
いや、残してるつもりだった。
そこはやっぱり、仕事だからだろうか?
結果を評価するのは、俺ではなくて上司達なのだ。
自分の持っているものだけで勝負し続けられるほど甘くないのだ。
なにかきっかけがあったわけではないが、このことに自然と気づいて努力するようになっただけ、俺は成長したんだと思う。
かと言ってこんなにフルパワーを続けるにも限界がある。
もっと効率よく、要領よくできるように、日々考えていかないとだ。
夏が過ぎ、秋を越えてもさぎりとはうまくいっていた。
会えない期間が少々あっても、前みたいに拗ねたり怒ったりしない。
もちろん泣くこともない。
さぎりもちゃんと成長しているんだな。
本当、よかった。
できれば在学中にさぎりに立ち直るきっかけをくれた友達に話を聞いてみたいと思う。
正直、あの頃のさぎりの相手は大変だったと思う。
それをここまで立ち直らせてくれたんだから、お礼をしたいと思っている。
まとまった時間を取るなら、長期休暇期間がいいだろうが、皆就職活動もあるだろうしなぁ…
今度さぎりに相談してみるか。
後日、さぎりが部屋に来たタイミングで聞いてみた。
「え?私の友達にお礼?」
『うん』
「って、なんの?」
なんて言ったらいいんだろうか?
『まぁ、俺たちがやり直せたのは、見守ってくれた友達のおかげ、みたいなところもあるだろ?』
俺は、一言一言気をつけながら言った。
さぎりに、不要な責任感を感じさせないために。
「まぁ、そう、なのかな?」
それはそうだろうと言いたいところだが、曖昧に頷くにとどめた。
『だからさ、お礼に食事でもと思って。』
「うーん、皆喜ぶとは思うけど、逆に気を遣わせてしまうかも」
まぁ、確かに。
『そこをなんとか、上手い事言って誘えないかな?』
無茶は承知だが。
「わかった。そこまで言うなら誘ってみるよ。けど、みんな皆就活があるから、冬休みに入ってからでもいい?」
『もちろん。よろしく頼むよ』
この食事会が結構できるのは、少し先の話になる。
季節はすっかり冬になっている。
今年は珍しく結構寒い。
俺はコートを着て大学に向かっている。
今日も図書館で資料を集めるつもりだ。
午後からは授業もある。
こうして残り少ない大学生活はあっという間に過ぎていった。
引越しの準備をしつつ、出版社からの「契約社員」についての説明を受け、学校では基本的に図書館にいて資料を集める。
仕事はそのまま図書館でするか、自宅に戻って行う。
合間に授業に出る。
就職課への挨拶も終えて、引っ越しは今回は荷物が多いので業者を手配した。
費用は自分でもつつもりだったが、親父が出すと言って聞かなかった。
俺としては助かるので、そこは素直にお願いした。
後日母親に聞いた話だが、親父は、俺が在学中に就職を決めて独り立ちしたことをすごく喜んでいたんだそうだ。
そりゃもう、自分の職場で毎日自慢するくらいだったらしい。
が、同時に寂しいとも思っていたようだ。
だから、「できることはしてやりたい」と言って引越しの費用を出してくれたらしい。
だったらそう言えばいいじゃないかと母に言うと、
「お互い様でしょ」と言い返された。
まぁ、確かに。お互いにあんまり直接言わないからな。
今度、飲みにでも誘ってみるか…
引越しを終えて、本格的に新体制が定着する頃には、もう夏になっていた。
相変わらず仕事が忙しいので、大学が夏休みに入ると俺の生活も少しは楽になった。
なにせ、試験勉強が大変だった。
どうしても首席で卒業したい俺は、勉強にも余念がない。
大変だが、ここで首席卒業できなければこの大学を選んだ意味がない。
試験前はさぎりとの時間や、寝る時間を削って、しっかりと試験に備えた。
ふと、俺も変わったなと思う。
以前の俺は、こんなに必死に努力しなくても結果を残していた。
いや、残してるつもりだった。
そこはやっぱり、仕事だからだろうか?
結果を評価するのは、俺ではなくて上司達なのだ。
自分の持っているものだけで勝負し続けられるほど甘くないのだ。
なにかきっかけがあったわけではないが、このことに自然と気づいて努力するようになっただけ、俺は成長したんだと思う。
かと言ってこんなにフルパワーを続けるにも限界がある。
もっと効率よく、要領よくできるように、日々考えていかないとだ。
夏が過ぎ、秋を越えてもさぎりとはうまくいっていた。
会えない期間が少々あっても、前みたいに拗ねたり怒ったりしない。
もちろん泣くこともない。
さぎりもちゃんと成長しているんだな。
本当、よかった。
できれば在学中にさぎりに立ち直るきっかけをくれた友達に話を聞いてみたいと思う。
正直、あの頃のさぎりの相手は大変だったと思う。
それをここまで立ち直らせてくれたんだから、お礼をしたいと思っている。
まとまった時間を取るなら、長期休暇期間がいいだろうが、皆就職活動もあるだろうしなぁ…
今度さぎりに相談してみるか。
後日、さぎりが部屋に来たタイミングで聞いてみた。
「え?私の友達にお礼?」
『うん』
「って、なんの?」
なんて言ったらいいんだろうか?
『まぁ、俺たちがやり直せたのは、見守ってくれた友達のおかげ、みたいなところもあるだろ?』
俺は、一言一言気をつけながら言った。
さぎりに、不要な責任感を感じさせないために。
「まぁ、そう、なのかな?」
それはそうだろうと言いたいところだが、曖昧に頷くにとどめた。
『だからさ、お礼に食事でもと思って。』
「うーん、皆喜ぶとは思うけど、逆に気を遣わせてしまうかも」
まぁ、確かに。
『そこをなんとか、上手い事言って誘えないかな?』
無茶は承知だが。
「わかった。そこまで言うなら誘ってみるよ。けど、みんな皆就活があるから、冬休みに入ってからでもいい?」
『もちろん。よろしく頼むよ』
この食事会が結構できるのは、少し先の話になる。
季節はすっかり冬になっている。
今年は珍しく結構寒い。
俺はコートを着て大学に向かっている。
今日も図書館で資料を集めるつもりだ。
午後からは授業もある。
こうして残り少ない大学生活はあっという間に過ぎていった。