酒飲み女子がどきどきさせられてます
優子が向かった居酒屋の入り口には「9時まで貸し切り」の札が立っていた。
企画2課が飲み会でいつも使っていが、これ場で「貸し切り」の札が出ていたことがない。中央に広い座敷があって、壁面に沿ってぐるりと座敷が囲まれている全席座敷タイプだ。少なくとも50人は入るだろう。2課は全部で16人だ。「貸し切り」の札に躊躇していると、中から3課の女の子が出てきた。
「お疲れ様でーす!お待ちしてましたー」
みんなが顔を見合わせて驚いていると、
「いま、うちもここで歓迎会してるんですよですよー。偶然ですよねー。驚きましたよー」
そんな偶然もあるのかと驚きながら中に入る。
「何これ。なんなの、この人数。。。」
居酒屋は知らない顔の人もいるのだが、顔見知りの社員が至るところに座っていた。つまりここにいるのは全員が、優子の勤める会社のメンバーであるのだろう。
唖然としていると
「課長ーーー!こっちでーす!」
とこちらを呼ぶ声がした。
キョロキョロと声の主を探すと、奥の方で手を振っている女性を見つけた。
「藤間さん、なんか人数多くないか?すごいことになってるけど」
課長が先に来ていた優子の1つ後輩である藤間に話しかけた。
藤間の小柄な体格や目が大きくふわふわな茶色い髪型からかわいらしい印象を受ける。
ピンクやブルーのカクテルの似合いそうな白い小さな手にはロックの焼酎という、酒飲みである。
「なんだかんだと2課だけじゃなく1課と3課と総務部がここで歓送迎会をするらしくて」
「なんだかんだとは?」
「1課の同期の子に聞いたんですけど、いつもは幹事をしない先輩が率先して予約してくれたらしいんですって」
「たいして、何だかんだしてないねえ」
「まあいい。2課は全員集まってるな?よし、始めようか」
課長の音頭で乾杯が始まり、料理に舌鼓を打ちながらおしゃべりを始めた。ここは飲み放題のメニューも充実しているし料理がおいしい。
優子は酒飲み仲間の藤間のそばで1杯目のビールを早々に飲み終わり、お代わりにハイボールを注文していた。八木君は課長の近くでにこにこと話している様だった。
そこへ
「お疲れ様でーす」
と総務部秘書課のっ女性陣がビールを持って現れた。
「せっかくなんで、ご挨拶に来ました」
「課を超えて飲む機会とかあまりないじゃないですかあ」
と言いながら課長にビールを継いでいる。
さすが、秘書課。皆さんきれいで服も女子力高い。居酒屋の座敷よりおシャレなレストランが似合いそうな洋服を着ている。
するとそこへ1課の女性陣が現れ、3課の女性陣も集まってきた。
2課の机周りが狭くなってきたので、優子と藤間は他の課のテーブルにお酒と箸を持って移動することにした。
「お疲れ様でーす。お邪魔していいですか?」
「あ。どうぞどうぞ。」
そこは3課の席だったようだ。
適当に3課の食べ物をいただきつつ、次にのむキールと藤間の焼酎のレモン割を注文した。