酒飲み女子がどきどきさせられてます
「おっとっとー」
私はいつも以上におどけてグラスを持ち上げてストップの合図をする。
「はい」
小山内さんが持っている瓶ビールを取り、返杯をしようとすると
「あ。私ビールって苦くて飲めないんですよ」
と断られた。

飲んでごまかせ作戦、早くも失敗に終わった。


しかし八木君が持ってきたもう1つのグラスを手に持った。
「では、代わりに僕がいただきます」
と再びキラースマイル。

「おっとっとー」
八木君もおどけた真似してストップの合図をする。
「八木君、わかってるねえー」
と乾杯する。
「カンパーイ」
「カンパーイ、ほら、小山内さんも!それなんですか?」
「カンパリオレンジです」
「では、カンパリー!」

「カンパリー!」
「カ、カンパリー!」
とよくわからない音頭を取る。

ぐびぐびぐび
ぐびぐびぐび
こくん。

「はい、お代わり」
「あ、どうも。はいお代わり」
八木君と二人でビールを継ぎあう。

「カンパリー!」
「カンパリー!」
「カ、カンパリー!」


ぐびぐびぐび
ぐびぐびぐび
こくん。



「香坂さん、いける口ですねえ」
「そうでもないけど。八木君こそいけますねえ」
「では、まあどうぞ」
「どうも」
「ついでに隣の先輩もカンパリー」
「え、おれ?カンパリー」
「はい、宇都宮さんと丸橋さんもカンパリー」
「カンパリー」
「カンパリー」


カンパリ、カンパリと言いながら適当に周囲の人と乾杯をして歩く。
そして少しずつ二人から距離を取っていく。

いたるところで乾杯の音頭の「カンパリ」が叫ばれている。
何が面白いのか全く分からないが、酔っ払いたちは面白いらしい。


そんなこんなで脱出成功!


「はいはい。なにこれ、どういう流れでこうなっちゃってるわけ?」

亮太郎が背後から私の肩に触れ、右手の瓶ビールと左手のグラスをそっと奪う。

「あ!つちたかちょおだ!ながいといれれしたね」
「電話してタバコ吸ってたの。ちなみに『くちた』が『つちた』になってからね」

亮太郎はテーブルに瓶とグラスを置き、私の目を見つめた。

「優子ちゃん、トイレと夜風、どっちがいい?」
「んんー、どっちもかな」
「了解。じゃ、たてる?」
「たてますよお。まだだいじょおぶ、くちたかちょお!さっきはちょおっとかんだだけですからー」
「そうか?あやしいけど?」
「あやしゅうこそものぐるおしけれですよおー。じゃ、いってきまーす」
周囲に手を振りつつ、亮太郎にささえられて席を立つ。
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