一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
エピローグ
―――クリスマスイブの夜。
ベッドの中で娘の穂波が幸せそうに眠っている。
鷹也さんとそっと枕元にプレゼントを置こうとすると、穂波が「パパ」と寝言で言ったので、二人でびくりと身体を震わせた。
しかしまだ寝ているらしい穂波を見て、鷹也さんと二人顔を見合わせて苦笑する。
枕元に2つ、ベッドサイドの机に3つ。
それに、ベッドの下に5つのプレゼントを置く。
両親だけでなく、曽祖父、祖父や大叔母、それに、穂波がすっかり懐いたソフラル製薬の前会長。
城内さんまでこっそり用意しているのが毎年恒例となっていた。
後でわかったのだが、やはり私の父は忙しさの中で私へのクリスマスプレゼントをあげられなかったことに長く後悔していたようだ。その分、今は2倍も3倍もかわいい孫にサンタとしてプレゼントをしてくれている。
「穂波の明日の朝の顔、楽しみですね」
サンタの役目を終え、リビングに戻ってほっと一息ついて声を出すと、
それを聞いて鷹也さんが微笑む。
それからそっと小さな箱を取り出すと、私に渡してくれる。
「これ、沙穂にクリスマスプレゼント」
「ありがとうございます!」
箱の中の白のビロード地の小さな箱。
中には、品よくピンクダイヤモンドのついたプラチナリングが入っていた。
「沙穂に似合うと思って。大きい宝石のものは使いづらいし恥ずかしいからってつけてくれないし」
「嬉しいです」
つけてみると、当たり前に前からそこにいたように、指にはまる。
「相変わらずぴったりですね」
「サイズはいつも触れてるからわかるけど……。でも店にあるもの全部沙穂に似合いそうだったから店でかなり悩んだんだよな」
そうさらりと告げられ、私は微笑む。
忙しい中で私のことを思ってくれる時間があったことが嬉しいと思ってしまう。
「私もあるの」
そう言って小さな箱を鷹也さんに渡す。
「ほら、少しだけだけど日本語教えてるでしょ。それでもらったお金で最初に鷹也さんに買いたくて。あまり高いものではないんですけど」
私が言うと、鷹也さんが嬉しそうに微笑んで目を細める。
中には小さなタイピン。
「ありがとう。沙穂が選んでくれたなんて、すごくうれしい」
鷹也さんが喜んでくれる顔が私にとって何よりのプレゼントだ。
今日も何個もプレゼントをもらっているなぁ、なんて考えていると、鷹也さんは私の唇に小さなキスを落として、それから、次は長いキスをした。
鷹也さんとするキスも好き。
これもドキドキしてまるでプレゼントみたい。
キスの合間、私は呟く。
「私ね。特別な日じゃなくても、鷹也さんと穂波といると毎日クリスマスみたいに幸せなんですよ?」
―――小さな頃、サンタなんていないと思っていたけど……
私はとびきりのサンタと出会ったらしい。
鷹也さんは嬉しそうに笑って、また私にキスをした。